2008年 12月 15日

どう「怖い」のか?/続

1.糖尿病は「治らない」
著者の指摘する誤解のひとつは、「血糖値が下がれば糖尿病は治る」という点(同22.p)。
インスリン分泌能には、ある不可逆点があって、それを超えれば決してもとには戻らないという
(「糖尿病になった人は正常な人に比べてすい臓機能は四分の一以下にまで落ち込んでいる
のだ。四分の一以下にまで機能低下が起きると、正常への回復は全く望めない
」、同25.p)。

先日、もう10年もインスリン注射を続け、毎日四回(朝昼夕の食前と寝る前)血糖値を測定し、
毎月診察を続け、毎年一ヶ月の「教育入院」を受けているけれど、「未だに治らない」という人に
話を聞いた。
「私なんか、病院のために働いているようなもんです」と云っていた。他の料金は知らないけれ
ど、検査用紙代だけでも毎月18000円前後だななどと計算してしまった(Ⅰ型糖尿病患者の
場合、一日二回分の検査用紙は保険申請できるが、Ⅱ型患者では適用外。医者の処方が
あれば二回までは適用されるのかな?)。
インスリン注射を続けると、血糖値が急降下する「危険」があるので、注射液量を加減するため
血糖値測定を続けているので、多分、注射と血糖値測定はセットで処方しているのだろう。
『糖尿病とたたかう』には、30年ほど前までは経口血糖降下剤やインスリン注射による低血糖
事故が怖かったと書いてある。
・「日本の津々浦々で悲劇が起こっていた。経口血糖降下剤による重症低血糖事故だ」37.p
・「経口血糖降下剤の低血糖がこわいのは、それが長く続くことだ。...ひとたび低血糖になる
と、薬によっては二日も続く。ブドウ糖を注射して、頭もはっきりして「もう帰っていいよ」と病院
でいわれて帰宅すると、次の朝、意識不明でひきつけることもある
」41.p
・「最もこわいのは、脳がやられることだ。...経口血糖降下剤による低血糖がひどくて長く続く
と、脳の高次の部分(意識的活動をつかさどる知的な部分)は、もうもとにもどれないだけの変化
を受けてしまう、不可逆的変化だ
」41.p
尤も、これは糖尿病そのものの「怖さ」ではなく、薬害事故によるこわさだ。特定機能の昂進や
抑制を目的にした薬には、大なり小なり副作用が伴う。こういう事故を防ぐためにインスリン注射
と血糖値測定をワンセットで処方しているのだと思う。
(以下追記)
通常は、拮抗ホルモンの働きで血糖値はある程度以下には下がらない。ところがインスリンや
薬の過剰投与やアルコールとの複合作用で急激に低下すると(50-60以下)、発汗や空腹感
脱力などを通り越して言語障害、錯乱、痙攣、昏睡状態に陥ることがある(「糖尿病学」1013-
14.p)。
体内で、最も大量にブドウ糖を使っているのは脳で、血糖値が高すぎても低すぎても、脳の働き
は悪くなり、血糖値70-140がベストの状態だそうだ(「糖尿病専門医にまかせなさい」59.p)。
僕は、医者から「日本糖尿病協会」の発行する「糖尿病健康手帳」を貰ったが、その表紙の裏
には大きく「私は糖尿病です」と書いてあり、その下に「私が意識不明になったり、異常な行動を
示したら、私の携帯している砂糖(ブドウ糖)、またはジュースか砂糖水を飲ませてください..

と書いてある。
低血糖のこわさは余談。インスリン注射を10年も続けても「未だに治らない」という誤解。注射
や血糖降下剤は糖尿病の治療薬ではなく、そもそもそんなものはない。すい臓機能を強化して
インスリン分泌能を回復させるわけではなく、外部からインスリンを注入するか、弱ったすい臓を
刺激してインスリンを搾り出すか、いずれにせよインスリンの浪費でしかない。
一方、食事療法や運動療法の場合、血中の糖の供給を減らすか直接に消費するか、或いは
細胞のインスリン感受性を高めるかインスリンの節約につながる。余病その他、何らかの事情
で食事療法や運動療法を続けられないか、あるいはそれだけでは効果がない場合に補助的に
薬やインスリン注射に依存することはありうるが、後者が主要な治療手段というのは「治療ガイ
ド」の方針にも反している。食事療法や運動療法を怠って、いくらインスリン注射や薬の投与を
続けても、穴の開いたバケツに水を注ぐようなもの。「それでは良くはなりませんよ」と話したら、
びっくりされた(尤も、いまどき食事療法・運動療法が基本だという話をしてないはずはなく、適
切に強調してないか、本人が上の空か何れかだろう)。
糖尿病治療を10年も続け、毎年「教育入院」を受け、未だにこんな「誤解」があるとは、教育が
悪いのか受ける側が悪いのか、いずれ両様相まっての結果だろう。
「教育入院」で何をやってるんですか?と聞いたら、「血糖値の調整だ」とのこと。病態に合せた
食事を出して、血液検査をして血糖値などを測定しているのだろう。運動をしたり、運動プログラム
を作成したり、糖尿病の勉強を受けたりはしないんですか?と聞いたら、「そういうものはない」
とのこと。いささか不可解な話。

ついでに指摘しておけば、読んだ本の一冊として紹介した『糖尿病は薬なしで治せる』という本
は、中味はともかく、二重におかしな表題だ。(続く)
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by agsanissi | 2008-12-15 08:48 | 糖尿病


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