2008年 12月 19日

どう「怖い」のか?/続々

2.血糖値が下がっても合併症は起きる
著者の指摘するもうひとつの誤解は、「血糖値を下げれば合併症の心配はない」というもの(同
前26.p)。
このへんの表現は、やや微妙で、血糖値を「下げても」合併症は起きるのかと受け取りかねな
いが、「血糖値を下げるのは合併症を起こさないためだ(もう起こっている人ならそれを進めな
いためだ)。このことを糖尿病の人は絶えず頭に叩き込んでおく必要がある。合併症を起こさな
いためには、安定した血糖値を継続する必要がある。一時的に下げても持続しなければ意味が
ないのだ。具体的には空腹時120以下、食後二時間180以下だが、特に食後二時間の血糖
コントロールが難しい
」(26.p)ということだ。要するに、合併症を防ぐには血糖値をあるレベル
以下に安定的に維持しなさいということだ。身近にいる患者を見ていると、「禁欲的」イメージが
つきまとうのか(50-60年前には庶民の当たり前の生活スタイルだったんだけれど)、血糖値
が下がると「安心して」菓子をボリボリ食べたり、夕食を腹いっぱい食べたりする人が多い。
先日、話を聞いた人も10年糖尿病「治療}を続けているけれど「夕食後には200にも、300にも
上がることがあるもの」と話していた。ヘモグロビンA1cも7%台というから、決して経過は良好
とは云えないし、最近「腎臓」の検査結果に問題がありそうで、精密検査が必要といわれたとの
こと。「人工透析をやるようになったら、もうお仕舞いですよ」とは云うものの、果たしてどれだけ
真剣に血糖値コントロールに注意を払ってきたのか?!

著者は、「何度も繰り返すが、27年間にわたる糖尿病治療の経験から得た信念はたった一つ、
糖尿病の治療はなんとしてでも合併症を防ぐこと、だ
」(93.p)と書いておられる。
僕も(と書くのは、多少、おこがましいが)、糖尿病の「怖さ」は色々指摘できるけれど、本質的な
「怖さ」は合併症に尽きる
と考えている。
まず、自分が糖尿病だと診断されて、問題になることは血糖値をコントロールして合併症に陥る
のを防ぐこと、血糖値のコントロールのためにインスリン注射または内服薬を利用するか、食事
療法・運動療法を続けるか(または併用するか)、それ以外には何もない。当面、血糖値が高い
という検査結果が出ているだけで、他には何の自覚症状もない(糖尿病性の動脈硬化の初期
症状が出ている、または出ていたが、自分では年齢のせいと見誤った)。
仮に、医者として何が出来るかというと、検査の他には注射または内服薬を処方するか、食事
療法・運動療法のプログラムを患者と協力して作成するか、合併症の兆候を発見するための
検査結果を注視するか、それ以外には何もない。
更に云えば、血糖値をコントロールできるのは、本質的には本人(の食事と運動療法)だけで、
医者はもち論、薬や注射ではない。この点を誤解している患者も多いのではないか?!
まず、糖尿病予備軍と診断されても、半数以上は(何も自覚症状がないから)放置している(厚
生労働省調査)、これは論外。次に医者に診てもらっているから、注射や内服薬を処方している
から、「治療」しているという「誤解」または安堵感。その挙句、合併症を併発させる例が多いこと
は、以下の数字が示している。
糖尿病性網膜症が起こる比率は血糖コントロールの良し悪しで比較すると、10年後で血糖コン
トロール不良群は21%、良好群は6%、20年後で不良群は52%、良好群は13%である。腎
症では、20年後で不良群は75%、良好群は53%である(同前27.p)。
当然、これらの数字は内科医の「治療」を受けている患者の実態である。著者は、この本の最
終章を「こんな治療、あんな治療」と題して「驚くべき治療の実態」としてお粗末な、或いは間違
った治療法のお陰で合併症を深刻化させた色々な例を挙げている。これに対する警鐘の意味
で「糖尿病専門医にまかせなさい」という表題をつけている。
しかし糖尿病予備軍を含めて1870万人と推定される対象者に対して、糖尿病専門医は3300
人、糖尿病療養指導士12000人(「糖尿病学」892.p)しかいないそうだ。10年後、20年後の
高齢者の国民健康状態を想像するに肌寒くなる現状だ。
[PR]

by agsanissi | 2008-12-19 16:30 | 糖尿病


<< 国民健康・栄養調査      小麦畑 >>