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農のある風景/作業日誌/ようこそ!!荒木農場へ

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2010年 12月 14日

カボチャの食味/2

北海道大学農学部農場研究報告第26号(1989)に、生前、北海道では「ジャガイモ栽培の神様」と呼ばれた
故吉田稔先生の「カボチャの組織とデンプン粒」という論文が掲載されている(PDFファイル、参照)。
16年前にお会いしたとき、「燐酸分の追肥でカボチャの食味は向上しますか?」という質問をしたとき、「直接の
因果関係は有りません」「僕は、カボチャの論文も書いたんですよ」と仰っていたのを思い出す。
当時、この論文を読む機会はなかったが、現在はネット上で公開されている。

要点を摘記しておくと、
・過去 15年間にわたりわが国のパレイショ生産における問題点を提起し,品質向上技術の開発と
指導を続けてきた。その基本概念は「品質を伴わないものは収量とみなされない」ということであ
る。 その過程で同じデンプン貯蔵作物であるカボチャの品質問題を調査することになり,その結果
の一部は北海道園芸研究談話会で発表した。調査の発端はパレイショと同様カボチャは野菜に含
まれてはいるが,他の野菜・果菜・根菜と異なり,一定水準以上のデンプンを含まないと,調理した
製品の粉ふき性が悪く、同時に食味が悪いものであり
,それは気象条件の影響もあるが,人為的な
技術要因によるもので,...
・本研究を通じて解明されたのは,カボチャとパレイショは共通点が多いということであり, とく
果肉内にデンプンが多く含まれ,調理したときに粉ふき性が良ければ食味も良い。したがい他の
野菜と混同し,外観や鮮度を重視するのは無意味で,市場ではデンプン含有率を提示するとか,水
煮したものを試食できるようにすることが望ましい。
・カボチャは古くから株に堆肥を用いて生産し,それを過用すると食味を悪くするから, 10 aあたり
3t前後とし,初期生育を促進するため 10aあたりチッ素成分 3-4 kgを施肥するのが適正である。
これらを金肥に換算するといわゆる標準施肥量の N:P205: K20 = 8 kg. 12 kg ・10kg前後
になる。
・肥大期間中比較的降水量不足で過ぎた年は,肥料成分の吸収率が悪くて,少収ながらも食味がよく
これに反し高温多雨年は食味の悪いものが多いということを繰り返している。(気象条件に左右されない
栽培技術の確立!

・(貯蔵性について)10-13'Cの聞は比較的品質が安定しているが,呼吸量による消耗がひどい。これより
高い室温だと一層消耗するばかりでなく,デンプンの糖化がひどい。これより低温だと消耗量は少いが,糖化
もひどい。
・(貯蔵性に関連した研究のまとめ
a) 10'Cの貯蔵中もデンプン含量は減少する。
b)全糖含量は 45日目に最高値になり減少に転ずる。(算定基準日はいつか?
c)含水率は貯蔵中増加しつづけ 2か月後から急増した。このときから粉質感はなくなる。
d)キュアリング (20-25'Cに約 10日間おき,葉柄その他の傷を治ゆさせるとともに,ある程度糖化を
すすめて甘味をつける)は糖化を促進し,腐敗を抑制し,果肉色の赤味を強くする。


by agsanissi | 2010-12-14 19:55 | 人参・カボチャ


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