2012年 01月 27日
・【白い道】を読んでいて、頭をガツンとやられた印象を持ったのは、次の一文。 「当時の農耕で見逃せないのは、水田耕作が実は差別の元凶になったことである。種籾のことをスヂと言った。スヂがあるとかスヂが 良いというのは、そういた種籾を所有する、いわゆる筋目のある家のことであった。種籾の所有者は土地に定着して、田植え期になると 人を集めて種籾を貸し出して水田を作る。集められた人々は、水田も種籾も所有しない、いわばスヂのない人間として低く見られ、 そこに差別観念が生じたものと考えられる。家筋とか血筋という言葉は、非常に差別的な意味合いを持って、この水田耕作重視の律令 制から発したものである。 それ故、水田耕作にまったく携わることのない山間や河辺、海浜に住んでいる狩猟師や金掘り師、炭焼き人、木地師、渡りといった人々 や関守の長吏や土師、鉢叩きと云われる聖、商人や永袖といわれた医師、そして遊興者としての傀儡などは、ことごとく卑賤の対象 にされることになる。」118p ⇒網野善彦の史観と通底するものかどうか、後者から学んだものか、独立した考えか、その辺は分からない。「現在の日本人は、..... 稲作農耕民の伝統の上に立っているという思い込み」とか「稲作文化は専ら支配階級の関心事であり、一般の百姓は畑作農耕によって 生き延びてきた」とか書いたことはあるけれど(「土を考える/日本人は稲作農耕民か/8、「環境」と云う殺し文句」、07/07/22、参照) ここで云うほど明確に定式化しては考えてはいなかったな。 ・ちなみに「すじ」で、日本国語大辞典に「稲の種とする籾(もみ)。もみ種。」と載っている。一方、「字通」には「筋」として「筋肉が骨に 連なるところの腱の部分の象形。」としか載っていない。日本国語大辞典の「筋・条(スジ・スヂ)には「植物などに含まれる繊維質のもの」 との意味はあるが、直接、種籾の意味は載っていない。両者は共通する所があると見なしてよいかどうか。 ・ところで、昨日の【白い道】からの引用に「貧賎、愚痴、少聞、破戒といったこれまでの仏教が歯牙にもかけなかった人々」云々とある 下線部は、一連の熟語として、どこかに載っているのか、それとも三国さんのもの?「少聞」は、日本国語大辞典には載っておらず、 「字通」に「寡聞」と同義として載っている。「卑賤にして寡聞なりとも、戒智あらば勝れたる人なるべしと」と【沙石集】に載っているそうだが この本は、法然の死後のもの。 ・【海の都の物語】は、ヴェネチア共和国一千年の歴史を扱った塩野七生さんの名著。その中に、こんな一節がある。 「ヴェネチアはその一千年を超える歴史の中で、一度たりとて、古代ローマが享受したパクス・ロマーナのような、彼らにとっての平和は 味わったことがなかった。....法の公正と国家への愛情から、しばしば中世のローマと云われるけれど、なんといっても海洋都市国家で ある。天然資源は塩しかなく、人的資源も、....この時期、十万を超えたかどうかという状態であった。1338年には13.3万人に達した けれど、10年後のペストでは、三分の二に減ったと云われる。」 ・以前(12/01/10、「人口減少時代のパラダイム転換」、参照)で、内村鑑三の【デンマルク国の話】、または少日本主義・大日本主義 の中で触れたけれど、海洋国家でありながら、鎖国主義で内に閉じこもったり、大陸国家の真似をして大日本主義の尻馬に乗ったりして 痛い目にあったりしたけれど、様々な面での(根本的な)条件変化が予想される時代(ニューノーマルな時代)、いまだ問題点そのものが 見えてこない政治的混乱、または停滞が続いているのは、余りにも近視眼のせいだろうか。 ------------------------------------------------------ 【2011年1月は何をやってた??】
by agsanissi
| 2012-01-27 08:22
| 日々雑纂
|
アバウト
カレンダー
検索
カテゴリ
全体 ジャガイモ ダイズ 小麦 ソバ/ナタネ 人参・カボチャ 野菜/自家菜園 機械類 気象/季節メモ 作業メモ 糖尿病 考える&学ぶ 参考記事 覚書 ミミズの寝言 料理 日々雑纂 余談 和野山点描 覚書B 【付録】
以前の記事
2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 03月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 more... ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||