2012年 01月 28日
・引き続き【白い道】(中巻)を読む。第9章「親鸞の出家」が良い。「往生要集」冒頭の地獄編が、単なる想像上の絵空事ではなく、 まさに生身の現実として、日常的有り様として迫ってくるような様相を活き活きと描いている。「末法」の意味、末法思想が歴史的 現実として活き活きと浮かび上がってくるような社会的現実をイメージして見ること。このような操作を抜きにしては法然や親鸞の 思想を理解することは不可能だ。この場合、「理解」するとは同化することでないのは勿論、同意することでもない。 ・吉川英治「親鸞」は親鸞が9歳で出家した際の神童ぶりを描いているが、【白い道】では、山門をくぐるに際して親鸞の眼に映じた 路々の地獄絵図、そのような現実社会と一種隔離された仏門とを隔離する山門の扉...などを通して描いている。小説的描写として は、後者のほうが良いな。 ・第8章「東国決起」では頼朝の挙兵を扱っている。前々から不思議に思っている、というか考えているのは頼朝が蛭ヶ島に流刑に されてから挙兵するまでの20年間の人格形成・思想遍歴とはどんなものだったか、ということ。この時期の史料は皆無に近いの だから想像するしかないのだが、1147年に13歳で流刑にされ、1180年に33歳で挙兵する。この後の頼朝の治世を「吾妻鑑」から 読み取る限り冷徹な現実的政治家(僕は大久保利通タイプの政治家を想像する)である。果たして、このような人格が流刑生活の ような閉じ込められた生活環境で形成されうるのか、というのが最大の疑問点だ。最も安易な考え方は北条時政の単なる傀儡では なかったかと見なすこと。本書では、頼朝・時政・政子の関係をサラっと面白く触れているが、核心には深入りしていない、無難な所。 「独立独歩の機運にあふれた東国政権は、平家の支配する京洛の政権を認めず、京で治承五年七月に年号を養和と改め、翌年には 寿永と改元してもこれを用いず、依然として治承五年、六年、七年としていた。東国独立の気概に満ちていた頼朝であったが、三善 康信の神の意志を体した天皇の犯すべからざる権威と権力の強い諫言をを受けた後、次第にその態度を軟化させていった。頼朝は 将門のように自らが天皇となって君臨することよりも、天皇信仰の不可解なまでの権威と権力を最大限に利用する、その一点に 戦略が絞られていった」200p、⇒ここは151pからの「頼朝と康信の対話」(第9章)の一節とともに極めて面白い。 ・東国武士の独立不羈の精神を貴族政治に対立する武家政権を確立するエネルギーとして吸収する一方、自己の権力に対立する エネルギーとして切り捨てていく過程(あたかも民族独立のエネルギーを革命に利用する一方、権力獲得と共にそれを抑圧する ソヴィエト権力を見るかの如し)⇒第10章の「東国政権樹立」の一節;上総介広常と三善康信の論争 ・【白い道】(下巻)、次第に朝廷政治にのめり込み、依って東国御家人勢力の反発を買い、遂には彼らに依って謀殺されたものと 描いている(第13章のうち「朝廷に接近図る頼朝」の節)⇒なおWiki【源頼朝】では「各史料では、相模川橋供養の帰路に病を患った 事までは一致しているが、その原因は定まっていない。吾妻鏡は「落馬」、猪隈関白記は「飲水の病」、承久記は「水神に領せられ」、 保暦間記は「源義経や安徳天皇らの亡霊を見て気を失い病に倒れた」と記している。これらを元に、頼朝の死因は現在でも多くの説が 論じられており、確定するのはもはや不可能である」としている。 ・この後、直ぐにひたすら北条家の繁栄を政子及び頼朝の転覆を図る北条一族の姿を描いている(第14章)。 ・たまたま「MediEigo」というサイトの「ソーダ課税で医療費が激減?」記事に行き会う(参照)。 「砂糖の入った飲料への課税で,医療費を大幅に削減できるとの試算結果が発表された。炭酸飲料,甘くしたお茶,スポーツドリンク など砂糖を多く含む飲み物は,2型糖尿病や肥満の原因とされ,米国の一部の州や市でこれらの摂取を減らすための課税が検討 されている。今回の試算では,米国全体での1オンス(約30 cc)当たり1セントの課税により,向こう10年間に10万例の心臓病, 8,000例の脳卒中,24万例の糖尿病,2万6,000例の死亡を防げるとの結果が出た。」というもの。 ・記事もさることながら、「医療関係者向けの英語学習サイトです」と銘打ったこのサイト、医学関係英単語を勉強するには持って来い だな。 ------------------------------------------------------ 【2011年1月は何をやってた??】
by agsanissi
| 2012-01-28 05:21
| 日々雑纂
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