2006年 01月 14日

「自然から学ぶ」ということ


「コツの科学」のコツのポイントを一言で要約すれば、自然界の知恵から学べということ。しかし「自然」と
いう魔法の杖を一振りすれば、「スローでたのしい」世界が開かれるかの話は、詐欺師まがいの与太話
に過ぎない。

「全体としては、コモンセンスの利いた良い本」と云いながら、この評価はひどすぎるのじゃないの??
と思われるかな。
でも、ちょいとおかしいじゃないのと思って引用している部分は、最初と最後の章の数十行で、本書の
九割程度を占めている次の諸章、
第1章生きている土
第2章植物の栄養
第3章作物づくりのコツ
の部分で書いていることは、土壌学、土壌微生物学、植物学、作物生理学、園芸学などのかなり一般的
な知見であって、必ずしも有機農業に独特の「コツの科学」を書いてるわけではないけれど、良いヒントも
かなりある。
第4章病気、虫について
にしても、作物の抵抗力や自然治癒力が基本だということは応用昆虫学や植物病理学が明らかにして
いることで、何も現代農業が「農薬をぶっかける」以外に知恵がないわけではない。西村さんの独特な
指摘と云えば「防ぐのではない、避けるのだ」という一点くらいかな。

「自然から学ぶ」という点に関して云えば、なべて自然科学は「自然から学ぶ」以外には、ほんの一握り
の土も一葉の枯葉も、一匹の虫も創り出せないので、必死で自然の所作を学んでいるに過ぎない。

自然を観察し、自然界の所作を「学べばよいだけ」のことだといっても、それで自然界の所作を田畑で
そのまま再現できるわけではない。

たとえば「害虫をフツウの虫にかえる」という話のなかで、蜘蛛がアミを張り、虫を捕食する食物連鎖の
話を例に、自然界では「捕食者と食われるものとの数が一定のレベルに落ち着くように、たがいにけん制
しながら数を維持しているのです。こういった状態が維持できるようにもってゆければ、害虫と称される虫
たちが、極端なわるさをすることは、たいていの場合ありえないのです。そうなれば害虫は、ただの虫に
過ぎないのです」という。
確かに自然界には、土壌の緩衝作用を含めて、ある種の撹乱作用に対してそれを元に復元しようとする
働き、その一部として捕食者と被捕食者との数を「一定のレベルに落ち着くように」たがいにけん制する
働きはあるが、それは時間的・空間的に瞬時に起こるわけではなく時間的・空間的ラグがある。それは
虫の一世代かもしれないし、数世代かもしれないし、一季節かもしれないし、数年かもしれないし、数十年
かもしれないし、数万年・数十万年かもしれない。
自然界の所作を、作物栽培という人間的レベルの物差しで計って、食物連鎖の関係を利用すれば「害虫は、
ただの虫」になると、人間に都合よく考えることこそ笑うべきことに過ぎない。
そもそも「害虫と称される虫たち」は、「極端なわるさ」をしようと思って野菜の葉や茎や根を食べているのか??
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by agsanissi | 2006-01-14 08:55 | 考える&学ぶ


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