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2006年 01月 15日

植物の病気

食物連鎖にふれたついでに、関連した話題を二、三回かいておこう。

「病理学」の教科書には、植物の病気はごくありふれた現象なのだと書いてある。
「植物の病気は微生物によっておこされることが圧倒的に多い。病気という言葉をきくと、われわれは身
の回りの特殊ないやな現象とみなしがちであるが、生物的にはごく普通の現象である。生物界には
食物連鎖という現象がある。大きな魚は小さな魚をエサとし、小さな魚は小エビをエサとし、さらに小エビは
プランクトンをエサとするというように、エサとする、エサとされるという関係で結んでいくと、生物は線状に
連なるという現象である。病原体が特定の植物に感染するのは、たまたまその病原体がこの植物の養分を
エサとして生長するように進化してきたためと考えることができる。さらにこの病原体もこれをエサとする
微生物やウィルスの脅威にさらされる場合も知られている。このように、植物と病原体との関係は食物
連鎖の一環であって、生物界ではごくありふれた現象であることを念頭におく必要がある」
(「植物病理学概論」、2001年2月刊、養賢堂)

すなわち病理学の立場から見て、植物の病気とは
・食物連鎖の一環である
・植物とそれに感染する病原体との関係は、病原体の特異的進化の結果である

こういう立場から見ると、「病原菌をただのカビ、害虫をフツウの虫」に変えるとは、どういう意味があるのか?
「自然界の知恵から学ぶ」と大仰なことを云うけれど、比ゆ的・情緒的意味以外には何もない。

「植物の病気がごくありふれた現象」であっても、病気の植物が「ごくありふれた現象」というわけでは
ない。(植物と菌との関係では病気、植物と虫との関係では葉・茎・根などの食害と読み替えればよい)
「ある植物が特定の病原体に対する素因(病気にかかりやすい性質、またはエサにされる関係:引用者注)
をもっており、そこにその病原体が存在しても病気が発生するとは限らない。病気の発生には植物が生育
している環境の条件が大きく関わる。それは環境条件の変化が植物や病原体の生育に大きな影響を
及ぼしているからである」(同書)
すなわち植物(感受体)と病原体と環境の三つの条件がそろったときに、はじめて病気にかかる。だから
三つの条件のどれかを除くか抑えればよいわけで、それには大きく分けて次の二つ、
・病原体(または虫)の生育や密度を抑える条件
・植物の抵抗力や治癒力を高める条件
具体的には、病原体(または虫)を物理的・生物的・化学的に抑える方法として
・遠ざける(忌避植物、おとり植物、虫除け資材、追い払う)
・天敵、フェロモン
・殺菌、殺虫(農薬ばかりとは限らない)
また植物を丈夫に育てる条件として、
・種子の管理や選定(健康な種子、適切な保管)
・播種条件や方法(適切な播種時期、播種方法、天候)
・栄養バランス
・温度や水の管理(畑の水はけ、ハウスや田の温度・水管理)
・土壌管理(中耕や培土)
など、いろいろな方法が考えられる。

これらの方法は、植物病理学や作物生理学から自ずから考えられる方法であって、有機農業だけの
独特の方法でもなんでもない。また現代農業に「農薬をぶっかける」以外の知恵がないわけではない。
にもかかわらず有機農業と現代農業を二元的対立物かに描き、「農薬と化学肥料にどっぷり浸っている」
のが現代農業かに書くのは、単に子供じみた誹謗でしかない。

一般に、専門家はこんな阿呆な議論(これを「愚論」という)をまともに相手にしない。尤も、専門以外の
ところで愚論を展開する専門家は結構いるけれど...。ために、素人受けする明快さがまかり通ってしまう
のを恐れる。
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by agsanissi | 2006-01-15 04:07 | 考える&学ぶ


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