2006年 01月 16日

土壌の緩衝作用

土壌の緩衝作用という点では、土壌微生物間の食物連鎖の関係もそのひとつとみなしてよいか。
「土壌の中は本来、ある種の微生物だけが優先して増殖しないように互いに影響あるいは拮抗しあう
状態にある。このため、ある種の微生物が増加すると、それを修復するような働きが生じてくる」
(「拮抗微生物による病害防除」木嶋利男著)
しかし実際には、微生物の活性という問題があって、修復作用が起こるか起こらぬか、またどのような
形で起こるかは、緩衝作用を通じて「病原菌をただのカビ」に変えられるというほど単純な話ではない
ようだ。

ある種の病原菌には、その病原菌をエサとして寄生し、病原菌を病気にして植物の病気の防除効果を
発揮するような拮抗微生物が知られている。この場合も、「エサとする、エサとされるという関係」には、
Aaという拮抗微生物はA病原菌には寄生するが、B病原菌にはなんの影響も及ぼさないというような種
としての特異性がある。
この場合、寄生は「まずエサである病原菌が増加し、植物の病害が発生してからこれをエサにする
寄生性の拮抗微生物が増殖する。したがって、病害の多発した圃場には病原菌に寄生する拮抗微生物
が多数生息する」(同書)
このように食物連鎖を通して土壌微生物間の緩衝作用が植物の病害に対する防除の働きを発揮する
が、エサとなる病原菌の増殖で初めて活性が発揮されるとすれば、土壌の緩衝作用があれば病害は
発生しないとは必ずしもいえない。

一方、土壌消毒のような方法で病原菌を殺した場合、病原菌だけを選択的に殺すだけでなく微生物層
そのものを希薄にしてしまう。その後にどのような微生物が回復してくるか土壌条件やら微生物の薬剤耐性
などによって様々である。土壌消毒を繰り返すことで「ブーメラン現象」という土壌消毒前よりも消毒後に
病原菌がかえって増加する現象が発生する例も指摘されている。この場合には、微生物層が単純化し、
緩衝作用そのものが失われてしまっている。

さらに連作障害に対して、連作を続けることで障害による被害が減るような発病衰退現象が知られている。
たとえば「コムギ立枯病菌を土壌にくり返し接種したり、発病した畑にコムギだけを数年連作したとき、
はじめは激しく発生した立枯病も年の経過とともに軽微になり、あるいは被害を見ないまでに低下し、その
状態が続く」(「根の活力と根圏微生物」小林達治著)場合である。
筆者は、すべての土壌病害においてこのような衰退現象がおきるかと問題提起して、特定の病原菌が増え
れば拮抗微生物が増えるとは考えられるから、その可能性はあるが「経済栽培としてなりたたない」(同書)
と書いている。
これは前々回に書いた時間的ラグの問題である。
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by agsanissi | 2006-01-16 06:14 | 考える&学ぶ


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