2006年 02月 01日

言葉が消える...


引き続き「ワキラボ」に関連した話。
「ワキラボ」の雑感のなかに、「鋤く」という言葉は、日本から消えつつあるのかという短い
文章が載っている。
大英博物館の展示に触れながら、ちょっとしたエピソードを紹介している。
 昨年末、原稿で「鋤き込む」という言葉を使って某月刊誌の編集部に出しました。しばらく
すると電話連絡が。「編集長とも話したんだけど、鋤き込むでは何をするか分かりにくい。土
に埋め込むにしたいんだけど、どうかな?」
 そんじょそこらのいい加減な出版社じゃないのです。はっきり言って一流どころ。しかも、
経済界に太いパイプを持っている。そこに勤める人たちの語彙にもはや、「鋤く」という言葉
がない。いや、正確に言うと彼らは、「日本の経済を支える一流企業勤めの読者には、鋤くと
いう言葉が通じない」と思っている……。
 5000年前には既にあった、人が生きるのに欠くべからざる行為を示す言葉が消え行く瞬
間に、私は立ち会っているのだろうか?

鋤き込むと埋め込むでは、受けるイメージが相当に違う。鋤き込むには、耕すという意味が
込められている。埋め込むでは、単に穴を掘って埋設するに過ぎない。

対象となる行為や物が消えてなくなるとともに、消えていく言葉がある。意味を変えながら、
それでも残る言葉がある。
例えば、鍛える。大辞泉には「高温で熱した金属を繰り返し打ったり水で冷やしたりして硬度・
密度などを高め、良質のものにする」と書いてある。ツクリの段は、打つ・降ろすの意味だ。
文字通り、金属を繰り返し、打ち下ろして鍛える鍛冶屋の仕事は、次第に消えつつあるが、
意味を変えつつ残っている。今では「いじめる」という意味もあるそうだ。

鍬や鋤は、もう日常生活からは消えてしまっただろうか。岩手県のホームセンターでは鍬(ク
ワ)は、まだ普通に見るけれど、さすがに鋤(スキ)は見たことがない。鍬も一般には、せいぜい
クワガタムシとして残っているくらいで、果たしてそれが兜の鍬形に似ているからと知っている
だろうか?
ちなみに、クワやスキは「百姓の知恵袋」の農機具発達史から写真でたどる農機具の発達史
見ると画像が見られる。スキは「犂」と紹介されているが、牛などに引かせて使う形式のもの。

「耕す」という字は、昔、「田」を井桁に区切るという意味で偏(ヘン)に田を書いたけれど、
やがて現在のスキを表すヘンに変えられ、スキやクワで田畑を耕す意味に使われている。この
言葉もそのうち「何をするか分かりにくい」と云われるようになってしまうのか?
鋤き込むを埋め込むに変えられると考えるセンスでは、それも怪しむに足りぬ。

そういえば「筆耕」などという言葉は、すでに聞かれなくなってしまった。
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by agsanissi | 2006-02-01 05:10 | ミミズの寝言


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