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2006年 09月 16日

小麦の生産費用

10.6/20.9度、日照1時間、最低気温が6月半ば以来3ヶ月ぶりに10度台に
下がる。朝から全層雲に覆われるが、昼前ほんの一時的に陽射しがある。
午後は一段と雲が厚くなり、16時過ぎには今にも降り出しそうな気配。

三ヶ所のジャガイモ跡地に、すべてハローをかけ終わり、小麦・ナタネの播種準備が整う。
一ヶ所だけプラウをかけた後にハローを、他の二ヶ所はプラウをかけずにハローだけ。
この結果は、また後日。

小麦の生産費用はどのくらいかかるか?
まず、06/4/25公表の「農業経営統計調査」平成17年産小麦生産費を見ておく(参照)。
作付規模別の10a当り生産費と60キロ当り生産費とが出ている。
利子、地代、副産物収入など細々した費用・収入など大勢に関係ないものは省略して
大雑把な数字だけで考える。

一俵当りの販売額と生産費用を単純に比較できるので、先ず規模別に見た60キロ当り
生産費
から見てみる。物財と労働費用を加えた費用合計は1ha未満層は8500円以上、
1-2ha層で8426円。仮に60キロ当り販売収入を8500円とすると、作付規模2ha以下
は最初から赤字経営になる(利子・地代を参入すると1-2ha層の費用合計は8938円)。
家族のただ働きを前提にして、辛うじてプラスになるが0.5ha未満では、それでも赤字
経営だ。5ha以上になると費用合計は6000円前後で、一俵当り2500円程度の利益が
出るが、その内800円前後が自己及び家族の労働費用に相当する。

実際の収益は、反収によって相当な格差がある。そこで10a当り生産費用を見てみる。
規模別を無視した平均の費用合計は49886円、利子・地代を算入して51795円(自作
地の地代は考慮していない)。一方、平均反収は北海道が8俵、関東・九州の麦作地帯
が6-7俵、その他は5俵以下、2俵程度も珍しくない。ちなみに岩手県の17年産小麦の
平均反収は135キロ(「平成17年産4麦の収穫量」参照)。従って平均反収6俵以下の
地域(麦作地帯を除いた殆ど全部の地域)では、一般的に小麦を作ること自体赤字経営

のもとになる。
これを規模別にみた費用合計でも2ha以上になると大差はなく48000円前後。これ以下
の規模になると、主に労働費用がかさむため、0.5ha以下では63886円になる。

次に、僕自身の生産費用と比較するため10a当り生産費用51795円の主な経費をみて
みる。種苗費2595、肥料費6044、農薬費2479、賃借料13888、農機具・自動車費
8099、労働費8606、支払地代3313、以上の合計45024円(費用計の約87%)。

2ha規模の小麦作付けをした場合の僕自身の大雑把な費用計算をしてみると、
種苗費、180キロ程度の種子を使うが、これを全部購入すれば54000、一部自家種子を
使うから、これをキロ100円程度に評価すれば25000(10a当り1250、以下カッコ内は
10a当り換算値)。
肥料費、元肥および追肥分の合計で60000(3000)。
農薬費、殺菌剤を2回程度で24000(1200)
機械賃借料、ハロー耕起一回、3000×3hr、9000
        播種機       、800×2hr、1600
        ブームスプレイヤー、4000×3hr、12000
        コンバイン      、2000×20a、40000、以上合計62600(3130)
乾燥・選別、燃料(灯油)、100リットル×80、8000(400)
       、電気代        、5000(250)
支払い地代、3200×20a、64000(3200)、二年三作だから実際にはこれより少額。
以上の総合計は248600(12430)円
問題は労働費用の評価だが、自己労働のみで
耕起、播種、殺菌で1日。収穫にコンバインの整備まで含めて3日。乾燥・選別・運搬で
3日。以上で年間の総労働は7日だが、付帯労働も含めて10日程度。農業経営の実質
収益は自己労働に由来すると考えれば、総収益との差額を労働対価と見ればよい。
これに対して反収は300-350キロ程度、仮に5.5俵とすると、2haで110俵。
248600円を110で割ると、最も粗い数字で見た損益分岐点は2260円(注)となる。
実際には、二年ないし三年に一回はカビ害などで格外に評価される可能性が高いから
この二倍から三倍の販売価格でなければ採算点に達しない可能性がある。
(注)労働費用も減価償却も租税公課も含んでいないから、厳密には損益分岐点は
もっと高いところにある。しかし一応の目安にはなる。損益分岐点は経営規模によって
質的に変化するから比例的には変化しないが、僕の場合は10ha程度までは現在の
機械装置で対応できるから、この範囲では変わらない。反収を上げれば損益分岐点
は下がるが、反収を上げるには費用価格の上積みが必要かもしれない。また昔から、
この費用だったわけではなく、作業をトコトン合理化してここまで来た。全国的に見ても、
どの経営規模と比較しても、最も低いレベルだろう。これ以上合理化するには30キロ
袋詰めをやめて、500キロ程度のフレコン詰めに変更する必要がある。

以上の結果から「品目横断的経営安定対策」が実施された場合、過去三年間の実績から
4-5千円/60キロ程度にしか評価されないとすれば、経営的には麦作を続ける意味が
ないことになる。

さて、僕の場合の10a当り費用は仮に労働費用を考慮したとしても全国平均の半分程度
にも拘らずこのような状況だとすれば、反収が僕よりも低く、費用合計が僕よりも遥かに
高い地域・規模・経営内容の麦作経営の将来は「安定」的といえるだろうか?
「品目横断的経営安定対策」は、北海道その他二三の地域を除けば、
麦作は阿呆臭いから止めなさいという勧めとみなすことは見当違いだろうか?!
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by agsanissi | 2006-09-16 19:34 | 小麦


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