農のある風景/作業日誌/ようこそ!!荒木農場へ

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2007年 01月 22日

納豆騒動

たわいもない話だが、「納豆でダイエット」のテレビ番組が放映されたあと、暫くは納豆の
品薄状態が続き、最寄のスーパーの陳列棚から納豆が消える騒動が続いたそうだ。
僕は、ふと、もう30年余前のことだが「石油ショック」に揺れる日本で、スーパーからトイ
レットペーパーが消えた当時の大騒動を思い出した。あれはパニックと云ってよいが、
納豆騒動もパニックとは言わないまでも、プチ・パニック、一種の集団ヒステリーだと僕は
見ている。社会的病理現象とさえ考えている。

僕のように世情に疎い人間でさえ、10日以上前には知っていたから、相当に小世間を
騒がせたのではないかと想像はつく。
僕の知る切っ掛けといえば、九日の昼頃、近くの公園をぶらぶら散歩している最中に、
折から近在の職場から昼休の食事に、食堂にでも向うらしい三人連れが「テレビで...、
納豆がないらし....」と話している隻語を小耳に挟んで記憶に留めていたことだ。その後、
妻が買い物に行って納豆が置いてない、納豆のあるべき陳列棚の一部が、そこだけ取り
払ったようにごっそり空いていると話していた。更に、何日かしてテレビの「あるあるなん
とか...」という番組で、納豆を食べてダイエット....とかの話を、娘がどこからか聞き込んで
きた。それですべての話の糸が、僕の頭の中でつながって納得がいった。

それにしても妙な話だ。
僕なんか、もう納豆を何十年となく食べ続けている。しかも最近は十年近く自作のダイズ・
自作の納豆だから、人よりはかなり沢山食べている。「納豆でダイエット」が本当なら、
今頃は僕の体重は減量どころかマイナス体重になっているはずだ。
▽納豆は健康食品、という話も
▽これこそダイエットの決め手、という話も
耳タコというくらいに人口に膾炙した話で、どちらも話題性ゼロだ。
この話題性ゼロのありふれた二つの話を、ひと捻りして、ある種のヒット商品に仕上げた
ところに、この詐欺の手口の見事さがある。振り込め詐欺の横行と何か共通の社会的・
心理的要因があるのではないかとさえ考えたくなる。
尤も、その「ひと捻り」が何なのかは最近まで疑問だった。

昔から、「不安」の時代には迷信が横行し、奇談・珍談の類がはやる。いまは「科学の時代」
だから、さすがに迷信ははやらぬにしても、科学まがいのエセ科学、科学的データまがいの
とんでもデータがはやる。
「初めに結論ありき」で、自分の勝手な推論を裏付けるために、データさえ示せば良しと
ばかり、データの根拠、採取方法、比較方法、系統性、質と量の問題などお構いなしに
論じたり、果てはデータを改竄したりと、とんでも科学が大はやり。こういうエセ科学・
とんでもデータにころりと騙され易いのも「情報化」社会の一面かも知れぬ。
多少の誤解を恐れずに云えば、騙す・騙されるという関係は、その犯罪性や法的責任の
所在には疑問の余地はないが、心理的には僕は一種の共犯関係だと思っている。
「情報」の洪水に曝され、慢性消化不良を起こして、自分の頭で判断して・しっかりとした
認識として定着できないため、そこはかとない不安に捉われ、なにか自分で確かめ得る
手応えのあるものをつかみたいという無意識の願望が、エセ科学エセ・データにころりと
引っかかる下地ではないか。

畏れ入った話だが、先日の「朝日」は、この問題を「番組捏造」と一面トップで取り上げた。
かつて記事捏造で槍玉に揚げられた意趣返しでもあるかと勘繰りたくなった。ともあれ、
同記事の中に納豆でやせる「黄金の法則」として、1.一日2パック、2.朝晩食べる、3.よく
混ぜて20分放置してから食べる、と出ている。これでハタと気付いた。この「20分放置」が、
例のひと捻りだと。

この「黄金の法則」の根拠の是非は新聞記事に任せる。それ以上に深刻な社会的意味
持っているかも知れぬ事実は、この程度の幼稚な報道でスーパーの陳列棚から、納豆の
ようなありふれた食品が消えてしまったり、大幅に値上がりしてしまう、「食」の事情だ。
食をめぐる話題が巷に溢れ、スーパーには満艦飾の食材が溢れ、ダイエットの文字に血眼
になるほど飽食しながら、一朝事あれば、たちまち払底しかねない、日本の「食」の危うさを
暗示していないか。
同時に、自己の判断をテレビ「情報」に即応的に依存する本質的な「危うさ」をも。
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by agsanissi | 2007-01-22 17:33 | ミミズの寝言


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