2007年 06月 29日
麦秋というには一週間早い。しかも今日は雨だ。しかし6月の好天で萎縮による生育不足は 7-8割方までは回復したと見ている。県南の紫波町では去年よりは一週間早く、昨日から ナンブコムギの収穫が始まったそうだ。普代よりは、平均気温が3-4度ほど高いから、収穫 は10日から二週は早い。 今の時期、麦がきれいに色づいてくるから、他人は「今年は小麦が良いね、がっぽりだね」など と呑気なことを云ってくれる。間違いなく、いまは良い。問題は、収穫期の一週間(7月第二週) の天候で、約四十二週間の全生育期間の成果の成否はこれでほぼ決まる。但し、開花期を 挟む一、二週間にカビに対する耐性を如何に作るかで、その成否自体が左右される(この辺の 関係は微妙で説明が厄介だ)。 今年の6月の日照時間は、異常に長かった。だからといって7月の天候が良いという予想は、 全く成り立たない。過去20年間(1987-06)の日照時間の平均値は6月が約130時間に対し て、7月は116時間、梅雨本番に入るということか。 ところが面白いことに170時間を超える年が五度もある一方、僅か21時間、30時間の年も ある。要するに長短のバラツキ、日照時間の変動幅が大きいのだ。仮に各年の日照時間と 20年間の平均日照時間との差分を合計して平均すると6月が18.4に対して7月は39.0、 同じく標準偏差値は23.7に対して50.2、要するにバラツキが大きすぎて7月の日照時間 について今からは何も云えないし、6月の天候からは何も予測できない。 ところで僕の小麦の販売実績を見ると、平成14年までは全量一、二等。ところが平成15年 は約5割、16年は7割5歩、17年は十割が格外(30キロ5-6千円の小麦が、格外になると 千円以下4-500円になる)、18年は全量二等など。そして小麦の合格率と日照時間とは 相関していない。 何が起きたのか?? 平成15年度産から赤カビの検査規格が、前年までの25倍にまで厳しくなり、混入率0.0% になったのだ(天敵Wikiという面白いサイトの赤カビ病の項を参照)。平成18年は天候不順 で全国的に赤カビ病が多発したそうだ。久慈管内では、僕の小麦を除いて全量格外になった という(数十戸はいるのかな)。 ところで問題は、品目横断的経営安定対策が導入されると 1.この対策の対象外の生産者の小麦の販売価格は30キロ2-2.5千円程度 2.次に、この対策の対象者は最高4千円前後が上乗せされるが、その上乗せ額は平成16- 18年の販売実績の平均値で決定される固定値で、19年以降の実績は一切勘案されない。 3.従って平成18年以前に販売実績がない場合、また気象条件などでこの間の販売実績が 悪い場合は、そのまま固定実績として19年以降の販売価格に投影される。つまり4千円が 上乗せされるのではなく、0から4千円程度のどこかになり、しかもその後の生産実績と関係 なく継続される。 この平成16-18年の販売実績の平均値を固定値として19年以降の販売価格に投影させる 方式は、現場レベルでは様々な不満や矛盾を内包するものだ。これに対応するため農水省 担当者は、現場レベルの担当者を集めて研修会を開き、この方式は「今後10年間は変えない」 と断言したそうだ。 もち論、こんな断言は笑止というほかない。 1.10年以上の長期的展望を以て、継続的に実施された農政が今までにあったのか? 2.その農水省担当者は、10年以上継続してこの政策に係わるのか? 3.云うまでもなく、まだ実施される以前から、再検討しますとは口が裂けても云えない。 かくて、この政策は 1.この対策の対象外の生産者を切り捨てるものだ 2.新規参入の意欲を完全に否定し、シャットアウトさせるものだ 3.赤カビ検査基準の厳格化と相俟って、今後の拡大意欲を阻害するものだ 4.今後の全国的な小麦生産の動向は、米政策と相俟って集落営農方式の成否如何に よって左右される、などなどのことが予測される。 少なくとも、小麦に関しては自給率を引き上げる云々は、単なるウソに過ぎない。
by agsanissi
| 2007-06-29 19:17
| 小麦
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