2007年 07月 02日

「土目」について

13.8/21.1度、アメダスでは日照6.3時間だが、山はほぼ終日霧で気温も低く、
日照も2-3時間ではないか。夕刻19時過ぎからやや強めの雨。

6/29のコメント欄で森近さんから「土目」の意味の質問を頂いた。かなり無造作に使って
いるが(といって、安直に使っているわけではない)、分野外の方から、こういう質問を受け
ると、簡単に「土」といっても、それに込める意味には、或いはそれから連想する思いには
相当な違いがあるだろうな、同じ百姓といってもやはり同様の懸隔があるだろうなと、ハタ
と気付いて、ある種の感動を覚えた。そのせいで、多少、筆が走りすぎたがご容赦。
ちなみに、僕は自分のことを農家とは云わない。家業として農業をやっているのではない
のはもち論、小土地所有と不可分に結びついた農家というあり方を脱却できなければ、
日本の農業に未来はないと考えているから。

まず、コメント欄で触れたgoogleで検索した農業分野の使用例。
1、スガノ農機の「心土破砕機サブソイラ」の説明(参照)で、「強度が落ち込むので土目が
変わり」とある。強度が落ち込むの意味が不明だが、土の固結状態が変わり、土に亀裂が
入って隙間構造が出来るという意味のようだ。
2、サカタのタネの「培養土」の説明(参照)で、「既存の培養土は、かん水や移動のたびに
土目が鎮圧され、根の生育に必要な気相の割合が低下し、保水性・通気性が損なわれ」と
ある。これも土の隙間構造の意味。
3、江戸時代の「農業図絵」の四月の項の「一、遠山春薙畠焼」の中(参照)に、「土目能所は
中畠にもしる」とある。これは「土目の良い所は中畑に出来る」の意味で、僕が使っているの
とほぼ同様の意味(と理解している)。

僕は、どういう意味で使っているか?
作物によって、適切な砕土状態(土塊の大きさ)には違いがある。大きすぎるのは困るけれど
細かく砕土するほど良いわけではなく、大小どちらにもある程度の許容限度がある。それは
種子が出芽するときに、光を好むか好まないか、酸素や水分の要求度が強いかどうか、それ
自身の発芽力が強いか弱いか等で決まる。説明すれば難しそうだが、経験的に「まあ、こん
なもんかな」と見極めている。
播種前に、畑を起こすが、最適条件で作業出来るわけではない。播種時期の制限があり、
前作の収穫直後の場合もあり、日照りでカラカラに乾燥してる場合も、雨続きで湿気が多す
ぎる場合もある。最適条件で作業できるのは、むしろ例外。
この制約条件の中で土を起こすわけで、ひと言で云えば、その作業で望ましい砕土状態に
なり易い土を「土目が良い」と云っている。
見た目で云えば、土目は「粗い・細かい」状態を云うけれど、現実にそれを決めるのは土の
水分状態、水分が抜けやすいか滞留しやすいか、地下水位が高いか低いか、土質、畑の
歴史、腐植や有機物の残存量、土を起こす深さ、作業機の違いなど。仮に一枚の畑で同じ
ような歴史を辿ってきても、他の要素は場所によって様々な相違があり、それに応じて同じ
作業を繰り返しても砕土状態には、時に天地ほどの差異が出来る。その全体をひっくる
めて望ましい砕土状態になり易いかどうか
で、土目が良い悪い、と僕は使っている。

以下、具体的な例で説明する(全部、赤土の粘土質土壌)。なお文中の機械類は、次の場所
を参照してください(参照)。プラウは、ここ。写真は、全部、画面上でクリックすれば拡大表示
出来る。

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まず土塊の大きさの違いの例示。写真は、Ⅰ-1、-2、-3、-4等とする。以下同じ。
Ⅰ-1は、ジャガイモの収穫後にプラウで、30センチほどの深さで土を反転し、ハローで浅く
砕土をして、小麦を播種した。
Ⅰ-2は、去年黒ダイズを収穫した後、今年の五月頃まで放置してから、浅くロータリをかけ
雑草やダイズの残カンなどを刈り倒し、六月の中頃にやや深めにロータリをかけた。
Ⅰ-3の畑は、大型機械を入れたことがなく、20馬力程度の軽いトラクターで何度も耕転した
跡で、土塊が殆どないほどこなれている。一旦、土塊が崩れてバラバラの粒子状態のように
なった後に、俄雨が降り、急激に乾燥した場合、Ⅰ-4のように表土が盤のように固結してしま
って、人参のような出芽力の弱い作物は出芽できなくなってしまう。
小麦、ソバ、ダイズなら、-1の状態で充分、人参では-2の程度まで砕土したいところ、-3は
何を播種するのか知らないがやりすぎ。時に害あって益なし、無駄な労力と見ている。
こういう土塊の大きさの違いは、なぜ起きるか?
1.畑のそれまでの使い方の歴史の違い(大型機械の使用、作物、堆肥投入など)
2.作業機械の違い(ロータリかハローかなど)
3.起こす深さ、起こす時期の湿気状態
4.土質の違い

土質の違いは、1-3の土色を比較すると、1は赤っぽい、2と3は黒っぽい、これは大まかに
云うと土壌中の腐植の量的違いに依存する。しかし1の畑の色は下部はやや白っぽく、上部
はやや赤っぽい。同じ作物を作り、同じく堆肥を投入し、同じ作業機を使っていても、この違い
があり、下部の土はこなれやすく、上部の土は土塊の大きさは様々だけれど、どれも焼いた
土器を砕いたような状態で、この状態は10余年経っても変わらない。これは多分、土壌中の
鉱物質や金属質の含有量や質の違いによる(と考えている)。

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Ⅱ-1、-2は、ともにプラウ跡。2は、ほぼ土質は均一だけれど、1は、真ん中辺の筋と左上部
の筋にやや赤っぽい部分がある。河原の砂利のような礫や鉄分が多く、焼けた土器のような
状態で、一見、無機質の感じがする。仮に冬期にプラウをかけて、一旦凍結させれば、春に
は、どんな状態の土も、まるで砂丘のようにさらさらの土に変わる。
ところが、春または夏にプラウをかけた後にロータリをかけた場合、良くても-3の状態、悪けれ
ば-4のように、全く目も当てられない惨状を呈することもある。
-3はダイズの播種後、出芽状態が極端に悪かったので、7月にプラウをかけた後にロータリ、
-4はジャガイモの収穫後プラウをかけた後、ロータリ。5-6トン、トラクターも入れて8トン程度
ある重い収穫機の走行後は、土が物凄く締まる。

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Ⅲ-1は、ジャガイモの収穫後にプラウをかけ、ハローをかけた状態。-2は、ジャガイモの収穫
後にプラウをかけずに、いきなりハローをかけた状態。これは去年初めて試みて、実は結果の
良さに惚れ惚れした。ジャガイモの収穫機が重いので、一旦、締まった土をプラウで反転して
空気を深い層に入れてからロータリなり、ハローなりかける必要があると考えていたけれど、
実は畝間の土を収穫機で全部掘り上げてから戻してやるので、土は充分こなれており、ハロー
で軽く・浅く起こしてやる方が却って良い結果になったわけだ。
-3は、ダイズ跡に年末になってからディスクプラウをかけた状態。通常のプラウは、30センチ
ほどの深さで土を反転するけれど、ディスクプラウは15センチほどと浅い。堅く締まった深層
を出さない代わりに、雑草などを土中深く埋め込めない難点がある。

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実際の砕土状態と出芽状態を比較してみよう。
Ⅳ-1は、7/01のスズカリの畑を反対側から見た写真だ。手前の2-3メートルが、全く出芽
していないが、この部分の拡大写真が-2。-3は、別の畑の黒ダイズの出芽状態。
-3の土は、やわらかい感じがして、握ればポロポロ崩れるけれど、-2の土は、いかにも
鋭角的・硬質的で、金槌で叩いても崩れないように見えないか。実際にも、それに近い状態
で、一旦、-2のような状態にしてしまうと、その年はもう何をやっても殆ど効果なし、霜に当て
て翌年の解凍を待つしかない。この違いは何か、一般には堆肥投入が勧められるけれど、
反当数十トン規模ならいざしらず、数トン規模では効果がない。有機物の残存量という意味
では-3の畑よりも、-2の畑の方が多いくらいで、矢張り土質の違いや地下水位の違いが
重要な因子になっていると思う。

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Ⅴ-1の中央よりやや上に黒ずんで、播種跡がやや曲がって見える部分がある。これは
地下水路が通っているのか湿気がいつまでも抜けない部分だ。-2は、ソバの播種跡で、
やはり黒ずんで見える部分は湿気の抜けにくい場所で、真ん中より上の左右に長く伸びて
る所は、昔の沢跡。-3は、-2の畑の東方の延長上にある場所で、この畑の東隣は通路を
隔てて沢になっている。右方が黒っぽく見えるのは、畑が肥えているためではなく、湿気で
黒っぽく見えるのだ。ソバは、湿気に極端に弱く、-2の下部の湿気の強いところは出芽し
てない。
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by agsanissi | 2007-07-02 20:11 | 考える&学ぶ


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