2007年 07月 06日

土を考える/動かぬ植物/1

13.2/21.2度、日照5.1時間

先日の日曜日、NHKFMの昼の日曜喫茶室「花の命は永遠に」で、ある植物学者の方が
「植物は動けないとよく云います。しかしそれは少し違う。植物は動く必要がないのです」
という意味のことを仰っていた。
「動けない」と「動く必要がない」との認識の転換は、例えば生命科学の分野から考えると
革命的な意味があるかもしれない...なんて楽しい空想(妄想かな?)も浮かぶけれど、
ともあれ植物とて、全く動かないわけではない。

根は地中に広く・深く入っていくし、地上の茎・枝や葉はお互いに日照を妨げないように
数学的最適条件を求めて広がっていく。代謝活動に必要な養水分と光を求めて広がる。
ジャガイモの葉の配置に関連して、葉のつき方の規則性(葉序)について、故吉田稔さん
は次のようなことを書いておられる。
地球上の植物は、ヤグルマソウのように一筋にぐっると葉がつく輪生葉序と、一定の
角度で葉がついていく互生葉序とに大別され、ほとんどの農作物は互生葉序である。
イネは二分の一葉序、すなわち180度ごとに配置し、カヤツリグサの葉序は三分の一
で、一回転すると三枚の葉がつく

ところでジャガイモの葉序は(この先は「級数」を知らない人にはちと厄介なので、結論
だけ引用すると)、(3-√5)/2で「この葉序に360度をかけると137度30分28秒弱
という極限開度が得られる。この角度で配置すると葉は無限に重ならない。ジャガイモ
はまさしくそれであり、受光態勢が合理的な植物だといえる
」(「ジャガイモ百科」から)。
根の広がりに関しては、次のような記録がある。
ライ麦を1立方フィート(一斗缶の1.5倍強ほど)の土壌で四ヶ月栽培した結果、「根の
全長616m、表面積は約765㎡であった。根の伸長は、一日平均4.8km以上となり、
根毛の長さは10560km、表面積は1296㎡あった
」(H.D.フォス「土壌・肥料学の
基礎」から)。
植物本体が動かないからこそ、最も合理的な配置方法で茎葉や根を広げ(あるいは茎葉
や根が広がっていくからこそ、本体は動く必要がないか)代謝活動に必要な全ての養水分
を土壌から吸収し、光と炭酸ガスと水から生体を合成し、また生体に必要なすべてのエネ
ルギーを製造している。この過程に、人間の助けは一切必要ない。逆に、この過程に介入
し、植物本来の生体活動の結果を自分の生体活動に利用しているに過ぎない。植物は
人間なしに生きていけるけれど、人間及び動物は植物なしには生きてはいけない


雑草は、出芽した場所の諸条件に適合した強いものが生き残り、一種の群落を形成して
行く。同じく雑草といっても場所により、季節により、時には年によって、雑草の相が遷移
していく。更に除草剤を使った場合には、その種類や使い方によって雑草の相が、時に
ガラッと変化してしまう経験をしたことがないだろうか。要するに「栽培」という人為的操作
を受けないが故に、その場所に最も適合した雑草種が我が物顔に蔓延る。除草剤散布
等の人為的操作が加われば(プラウやハローなど機械の使い方によっても)、優勢種等
の条件が撹乱受け、別の雑草種が蔓延り、雑草の相が一変してしまう場合がある。

ところが作物ではそうはいかない。作物の都合によって、その土壌条件に最も適合した
作物種が栽培されるわけではない。専ら人間の経営上の都合によって作物種が選ばれ、
土壌条件がその作物栽培に適合する・適合しないに関係なく栽培される。
この場合、すぐに分かる問題点は二つある。
第一、「水遣り」(6/23)で触れた根張りの問題。根張りの良し悪しを規制する条件は、
土壌の水分条件、土壌の硬さ、団粒構造、空隙、微生物活性など。作物の側にも、その
作物固有の根の広がり具合や貫入する深さの違いがある。
第二、土壌中の養分バランスの問題。根を伸ばし、根張りを広げ、精一杯、養水分を
吸収したにしても、また作物そのものには養分を選択的に吸収する能力があるにしても、
土壌中の養分バランスが崩れ、またはある種の養分が絶対的に不足したり、土壌コロ
イドなどとの結合状態などの条件で吸収できない状態に陥っていれば(この場合は、根
からある種の酸を出して吸着状態を溶かして利用できるようにするなどの事例も解明さ
れてきたが)、作物そのものにはどうにも出来ない。
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by agsanissi | 2007-07-06 19:24 | 考える&学ぶ


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