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2007年 08月 04日

土を考える/有機農法/15

1日の朝は11度まで下がったが、2日の朝7時以降は一貫して20度以上で、今朝は蒸し
暑い。6時前に一時雨になるが、7時現在は無風。台風は秋田沖の北緯40度線上付近。
これから津軽海峡を抜け、つれて風が強まるか?或いは明日の吹き返しの方が強いか?

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有機農法の基本的な考え方は、比ゆ的に云えば「一物全体食」の考え方と同じものだ。
即ち、機能的要素と思われるもののみを抽出した人工的素材を排除して自然素材のものを
丸ごと全体として利用する。この場合、本来の自然素材はその地域の風土的条件に対応した
ものであり、その土地の環境によって育まれたものでなければならない。
いまでは「有機農産物の日本農林規格」(参照)が規定され、逆にこの規格に沿った農産物を
産出する農法が有機農法かに矮小化されている
が、有機農法の本来の考え方を最も原則的
に反映している自然農法国際研究開発センター技術研究部の編纂した「MOA自然農法」(農文
協/1991刊)から、「自然農法の原理」とされているものを要約してみよう。
同「研究開発センター」の規約第三条の「目的」には「自然農法」を「地域の実情に応じて自然の
生態系を利用した生産技術体系」と規定しており、従ってそれは固定的な技術体系ではなく
研究開発の対象である。
その場合の「根本理念は自然順応、自然尊重にある。自然農法の原理とは、土の偉力を発揮
させることである。土を生かすということは、土壌に人為肥料の如き不純物を用いずどこまでも
清浄を保つのである。そうすれば土壌は邪魔物がないから、本来の性能を充分発揮し得る

と(同開発センターが自然農法の創始者と仰いでいる岡田茂吉は)書いている。
いわゆる有機農法と自らの自然農法とを区別している事は、
農薬や化学肥料を使用しないか制限する農法には、生態系農法、代替農法、有機農法、各種
の微生物農法などがある。これらの農法の中で、自然農法は広義の生態系農法に含まれる
云ってよい。あえて特徴を挙げれば、自然の摂理を尊重し、自然に順応するという理念が明確
になっていることである
」と書いていることで分かる。
但し、あえて云えば、ほかの如何なる農法にせよ「自然の摂理」を無視して成り立ち得るの
か、当事者の如何なる意図にも関わらず、すべての人間的営みは結果として「自然に順応」
せざるを得ないのではないのか。やや言い過ぎを承知で書けば、我独り自然を代表するかの
独善性が不愉快だ。
「自然農法の原理」として、いろいろ書いてあるが、その大部分は自然農法の利点(例えば
根張りが良い、姿形が美しい、美味い、日保ちがよい、土壌生物が多い等)及び応用技術で、
本来の原理と見なされるものは、堆肥の利用に尽きると云ってよい。
良い堆肥の作り方、立地条件に合わせた堆肥素材の選び方、堆肥利用上の注意(堆肥を生き
物として扱う)、その他雑草対策、害虫対策、輪作連作、共作、地表被覆等、いろいろ書か
れているが、これらはすべて堆肥の応用技術に関連するもので、農法の基本点としては堆肥
利用に尽きる
。また、この点でここに云う「自然農法」と福岡さんの自然農法は基本的に違
っている。
福岡さんは、こういうことを書いている。明治大正時代の日本の農業は有畜の堆肥重点主義
の農業で、経営状態は多角経営であって、集約的経営であった。これを真似たのが外国の
有機農法だ。これをもう一度日本にもってきた。「有機農法は、聞いた範囲内では、西洋哲学
の考え方に出発し、科学農法の一部に過ぎないのではないか。科学農法と次元が同じである。
もち論、結果的に見て、実践していることがらそのものが、昔の堆肥農業と変わらないという
ことは、科学農法の一部と見られやすい

要するに、化成肥料を堆肥に置き換えただけで、科学農法と同じ次元の農法だと批判する。

どっちが本来の自然農法かという議論には、僕は関心がない。自然素材を利用して、それら
をいったん堆肥化して、外部投入を認めるかどうかの点で、両者は基本的に違っている。
現在では、有畜農業は例外的だから身近の野草、籾殻、イナ藁、オカラ、米ぬか等が堆肥素
材として薦められているが、要するに堆肥化して外部投入することが基本技術と考えて良い。
なぜ堆肥化をするか?浄化または無毒化して自然の生態系を撹乱させないため。
枯葉や小動物の死体は、土の表面で浄化されるもので、そのまま土の中へ深く入っていく
ことはない。人為的に土中へ入れると特定の生物が急に増殖しほかの生物は減少するなど、
生態系がかく乱さえる。化学物質が入っても同様のことが起こる。こうなると、正常な浄化
機能が失われ、地上の植物や動物の系にも混乱が起こる。このような生態系の乱れや貧化に
よる浄化機能の低下が土を汚すということであろう

しかし生態系のかく乱や浄化機能の低下と云っても、タイムスパンをどの程度に見るかとい
う相対的な問題であって、福岡さんの視点から考えれば外部投入そのものが生態系のかく乱
要因ということになる。
こういう点から、自然農法と区別して有機農法に入れた。

但し、以上は本来の有機農法の考え方で、法的に規定された有機農産物を生産する農法とし
ての有機農法は、きわめて矮小化されたものでしかない。
「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインの改正」(平成15年4月改正、平成16年4月施行)
の「有機農産物」の定義を見ると、
「化学合成農薬、化学肥料、化学合成土壌改良材を使わないで、3年以上を経過し、堆肥など
(有機質肥料)による土づくりを行ったほ場において収穫された農産物」(参照)とある。
厳密には、「日本農林規格」(上記)の規定によるが、実際的には化学合成資材を一切使わ
ずに3年以上継続して土作りをした圃場の農産物
ということになる。
第10回の冒頭で
有機農法の作物を宣伝するのに、直接に「有機農法です」という場合と「化成肥料や農薬を
一切使わない」と化学農法のアンチテーゼとして説明する場合とがある

と書いたけれど、有機農産物と「直接に」表記する場合も、余計な修飾語を取り除いた、最
も簡明な定義は「化学合成資材を一切使わない」ということに還元される。
なぜ、化学合成資材は一切忌避すべきなのか?
「日本農林規格」の第二条一項は
農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を
避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力(きのこ類の生産にあっては
農林産物に由来する生産力を含む。)を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への
負荷をできる限り低減した栽培管理方法

と曖昧に規定する。
・自然循環機能は、農業にのみ課せられた課題なのか
・自然循環機能を維持増進するためには、化学合成資材は一切忌避すべきものなのか
・農業生産に由来する環境負荷は、化学合成資材の使用にのみ還元されるのか
・化学合成薬剤の人間・家畜・環境への一般的投与は自然循環機能や環境負荷に係わりない
のか

誤解のないように書いておくが、化学合成資材を自由に使わせるべきだとかなんとか、そんな
ことを云ってるのではない。適正な使用法もなにもない、味噌も糞も一緒くたに自然循環機能
の維持増進と環境負荷の軽減のために農業においては化学合成資材は一切使用しないほう
が良いかに(たいした科学的根拠もなしに)宣言していることを問題にしているに過ぎない。
・天然素材なら良くて、化学合成資材はなぜ一切忌避すべきなのか
・化学合成資材の量と質が問題ではなく、化学合成そのものが問題なのか
・化学合成資材そのものが問題とするなら、なぜ有機農産物にのみかかわるのか
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by agsanissi | 2007-08-04 07:33 | 考える&学ぶ


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