2007年 08月 05日

怒りのはけ口


20.8/26.2度、日照1.4時間、早朝一時雨、1ミリ。吹き返しはなし、風は概ね穏やか。
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今朝配信された村上龍さんのJMM(No.438 Extra-Edition2)「朝青龍の「疑惑」」と題す
るエッセイは、自民党の惨敗に関して、僕がそれほど明示的には理解していなかった大事な
論点を提起している。それで、またまた追補(JMMについては、ここを参照)。

村上さんは、相撲協会による朝青龍の処分について
相撲協会は、国民の怒りの大きさに恐れをなして処分を決めた印象がある。巡業を休み、モン
ゴルでサッカーに興じる朝青龍の姿を見た国民の大多数は、仮病だと思ったし、メディアもそ
ういうニュアンスで報道した。
決定的だったのは、朝青龍がゴールを決めたあとの笑顔だった。朝青龍は実に楽しそうだった
のだ。あの笑顔を見ると、ひょっとしたら腰が痛いのを我慢してモンゴルの偉い人に頼まれて
無理を押して出場したのかも知れないという好意的な想像をするのはむずかしい。そこで、仮
病に決まっているという「決めつけ」が生まれた。国民的な怒りが湧き上がり、日本の国技で
ある相撲がなめられたような気がしたのだと思う。

と書いている。僕は、朝青龍の処分云々については、ここに書いてある以外のことは何も知ら
ない。だが、次の一節のような処分が往々にしてある、というより権威主義的な組織では臭い
ものに蓋式の一般的な処分方法だといってよい。
だが、朝青龍の公式な「罪状」はいったい何なのだろうか。事実の積み重ねではなく「疑惑」
だけで判断し、国民的な怒りに圧倒される格好で処分を決めるのはフェアではないし、問題点
も曖昧なまま残ってしまう
。相撲協会がもし仮病だという証拠をつかんだのなら、診断書を書
いた医師を訴えるべきではないか。


ここで村上さんは、一転して、
どういう根拠でその処分は行われたのかという疑問は、参議院選直後に辞任した赤城元農相
にも同様に残る。あの人は、具体的に何の罪を認め何を反省して大臣を辞したのだろうか。
政党助成金の経常経費について非を認め辞めたのだったら、本当は大臣だけではなく国会
議員の職も辞すべきだろう。刑事罰の対象かも知れない。自民党の大敗の責任を取らせるの
だったら、党籍を奪えば済む話ではないだろうか。

と問題を提起する。そのすべてが国務大臣を辞めたというだけで曖昧にされたままだ。同じこと
は前任者の故松岡農水相にも、死んでお詫びという形式で貫徹された。これは日本的慣習の
美点でもあり・醜点でもある。マスコミは、この慣習にドップリ浸かって、一歩でも抜け出す努力
をしないどころか、これを助長している。引き続き村上さんの言葉、
あなたは正確にどういう理由で大臣を辞めるんですか、と赤城元大臣に聞けばはっきりしたは
ずだが、大手既成メディアの記者たちは追究しなかった。処分が厳密な基準で行われたかどう
かが問われないのは、ニュースが結果的に国民のカタルシス(感情の浄化・気晴らし)として
機能しているからだ
。その処分が何に基づいて行われたかよりも、国民の気が済んだかどうか
がより重要になる。将来的に社会がさらに不安定化するとき、大手既成メディアは、無自覚に、
またより明確にファシズムを培養する装置と化していくだろう。国民の心情を煽り、感情的で
非寛容のカタルシスを求める大手既成メディアの報道姿勢は、改善される様子がない。


さて、「僕がそれほど明示的には理解していなかった大事な論点」とは、
民主党は「敵失」で実力以上に勝ってしまったとは、既に指摘したとおりだが、自民党の惨敗
は、専ら安部内閣に対する国民の怒りに端を発しているという点を、やや曖昧に捉えていた。
政治的才覚の欠落と同じことだが、格差、年金の杜撰な扱い、公務員の天下り、大臣の疑惑・
失言、消費税、小規模農家の切捨てなど様々な怒り・不満が渦巻いていた。この怒りや不満・
不安に対する安部さんの鈍感さ、国民の痛みを共有し・分かち合うという姿勢の欠落
、それに
対する憤りが一挙に噴出して惨敗した。
小泉さんによって「リーダーの政治的才覚によって勢力地図が大きく塗り替えられる時代」が
幕開けした。その初っ端に政治的才覚を全く欠落した首相を担いだことが自民党にとっての
不幸であり、歴史的惨敗の真因だ。これを全く自覚していないことは続投する「責任がある」と
いうひと言が如実に語っている。問題は、この怒りが、今後、どういう方向に向かって噴出し、
あるいは吸収されていくのかである。民主党が、単純に、これで政権に一歩近づいたと考えた
としたら大きな誤りだ。この点で、村上さんの指摘は示唆に富んでいる。
将来的に社会がさらに不安定化するとき、大手既成メディアは、無自覚に、またより明確に
ファシズムを培養する装置と化していくだろう。国民の心情を煽り、感情的で非寛容のカタル
シスを求める大手既成メディアの報道姿勢は、改善される様子がない

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by agsanissi | 2007-08-05 20:46 | ミミズの寝言


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