2007年 10月 22日

食と農を考える/覚書

昨夜半の気温が最も低く、4.8度から次第に上って、6時現在は7.3度。雲が多く、
星は殆ど見えない。

NHKの朝5時37分からシリーズで「健康ライフ」を放送している。今週のテーマは
「心と体と免疫学」で安保徹という方の話だ。この方、「健康長寿の免疫学」という
テーマで、過去にも何度か登場している。4、5回聴いただけだけれど、ユニークで
興味深い内容で、機会があれば、是非、この方の著作を読みたいと思っている。

うかつな話だが、今朝の放送で「腸管免疫」という言葉を初めて聞いた。googleで
検索してみると34万件もヒットする。まだ二三の記事を読んだだけだけれど、一見
して「食と農」に関連して重要な概念とすぐに分かる。
「腸内細菌叢(腸内フローラ)と免疫力」(参照)という記事には(その中味は、まだ
熟考はしてないけれど)、次のように書かれている。
いろいろある免疫系でも、日ごろの食生活が影響し、自分でも強化することが可能な
腸管免疫の働きが近年注目を集めています。口から入った病原体の大部分は唾液
や胃液、胆汁などで殺されます。それらをくぐりぬけ、腸に到達すると腸壁から侵入を
図ろうとするのですが、それを迎え撃つのが腸内細菌叢(腸内フローラ)の中に善玉菌
です。善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌がたくさんいれば、免疫力が高まっている状態で、
病原菌は悪さを発揮できずに排除されます。反対に悪玉菌が多いときには、病原菌に
感染するだけでなく、腐敗物が多く生成されて有害物質を出したり、食中毒を起こしたり、
体臭をきつくしたりします。
このような腸内細菌は百種類以上百兆個も住んでいるといわれています。それらは腸内
細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれ、同じ種類の細菌同士が群生しています。善玉菌が優性
のフローラであれば、健康が維持され、悪玉菌が優勢の時には体調が悪くなります。
身体の防御機構である腸内細菌叢は個人差が大きく、加齢や食事、ストレス、薬(抗生
物質)の服用などで絶えず変化します。


何故、この記事に注目したかというと、以前、編集著者の一人である医学者の方から
「食育教育」の教材を贈って頂いたことがある。これがきっかけで何度かメールのやり
取りをした際に、次のような質問メールを送ったことがある。
「食育」に関連して、食養生、医食同源(乃至薬食同源)、身土不二などの概念が
昔からあります。様々な思惑と結び付いて使われ人口に膾炙した概念で、それ故
やや曖昧な概念でもあります。
しかし「人は食によって養われる」という基礎的な、最も大本の考え方に於いては
揺らぎはないようです。
問題は、「食」及び身土の「土」をどう捉えるかです。

何を「食」とするかは、風土と社会システムで規定され、未開社会ほどより強く
風土に支配され、文明が高度化するほど社会システムに規定されます。この場合、
社会システムとは狩猟採集・農耕文明から最近のグローバル化や農業政策・貿易
交渉、更にはスーパーマーケットの支配、商業主義、ダイエット願望、テレビ文化
の氾濫、栄養学・保健医学などの科学まで(要するに人間の摂食行動を直接・
間接に規制する社会的・意識的内容)含む、言い換えれば自然風土を除く全部と
云ってもよいほど広範な(広範すぎる)概念として使っています。中には半ば風土
化して前者との区別の付けにくいものもあるかも知れません。
動物の場合は、大部分は自然と風土に依存します。それでも百%ではありません。
人間による自然と風土の改変、また家畜や畜産業の動物は人間の支配下に置か
れ、明確に社会システムに規制され、牛のように同種属の骨肉辺まで「食」にさせら
れる始末です。

当然、お分かりのように、食は風土によって支配され、人間の「食」は風土と
不可分の関係にある
というのが僕の考えです。問題はどの程度までか、大方の
物事は中心値を最大値とする正規分布を示しますが、乖離幅と許容限度はどの
程度かということです。風土という概念の幅そのものが、国境のように截然と
区別できるものではない故に、また風土は時間的・空間的に遷移する故に、風
土と食の「関係」の許容幅は一段と広がります。

で、質問の第一は、
食と風土と体質、或いは食を摂取する内的システムの関係を、現在の栄養学・
生理学は体系的に研究しているのか?
腸の長さの比較とか、乳糖を消化する能力の差とか、粉食と粒食文化の差とか
腸内細菌の差だとか、断片的な知見は目にしますが、体系的な研究はあるので
しょうか?
「食育教育」というと、合言葉のように、地産地消、身土不二等の言葉が唱え
られますが、現代に相応しい内容で理解し、実際的意味のある合言葉にするた
めには上記のような研究は不可欠であり、それなくしては身土不二など空疎な
決まり文句に堕してしまうと考えておりますが、如何なものでしょうか?

質問の第二は、
イ、「食」を摂取する人間の内的システムは、数十億・数百万年というスパン
の歴史的所産です
ロ、「食」を人間の内的システムに同化するシステムも「食」によって規定さ
れるでしょう
(註:イ、ロは、これ以前のメールでの僕自身の規定)
という規定に関連します。イ、は生命学や生理学の対象、ロ、は栄養学の対象
でしょうか。現代の栄養学は、イ、ロ、どちらの認識も共に薄いのではないか
と感じています。栄養学は、つまみ食いをしたことしかありませんから確言は
しませんが、栄養素、ミネラル、酵素の役割、食物の栄養素、過剰と欠乏等の
解析的分析に留まっているのではないか?
ここからは植物栄養学との比喩で説明しますが、最近まで三大栄養素N、P、K
の研究が殆どでした。植物生育に於ける微量要素の重要性や栄養吸収や生理
に於ける土壌微生物の役割が重視されるようになったのは、ここ20-30年の
ことではないでしょうか。
微生物にとって、人間は宇宙にも匹敵する小宇宙にほかならず、数百万年に及
ぶ歴史の中で、様々な共生・寄生の関係を築いている(ものがある)はずです。
問題は、植物生理に於ける土壌微生物の役割と類似の役割を、人体に於ける
微生物叢は果たしているのではないか、と考えて然るべきではないか。つまり
栄養消化・吸収、酵素や免疫機能、ホメオスタシス、体液などに微生物叢の性
質が関わっているのではないか

腸内細菌についての断片的知見や発酵食品における微生物の役割は注目さ
れていますが、「食」を人間の内的システムに同化するうえでの微生物叢の
役割を組み入れた総合的な(解析的分析に対比して使っています)栄養生理学
の研究というのはあるのでしょうか?(それとも全く見当違いの見方?!)
同一作物を連作すると土壌微生物群に偏りが現れ、病害に侵され安くなります。
人間の場合も、「食」の内容によって体内の微生物叢に偏倚が現れ、消化・吸
収系、免疫系などの機能に影響するなどのことが、あるのかないのか?
また上記のイやロのことを、僕は単に演繹的に書いているだけで、その内容を
本当に理解するには、上記のような立場に立った栄養生理学の研究が不可欠
だと思うのですが、如何なものでしょうか?
質問の一、二ともに、そういう研究があれば、文献をご紹介願えれば幸いです。

(他人の書いたものの引用はブルー、自分の書いたものの引用はオレンジを
使っている)

このメールに対して、まだ、はかばかしい回答を受け取っていないが、「腸管免疫」
という概念は、この質問(特に第二)に直接関わることは一読して明らかである。
腸管免疫の概念を手掛かりに「食と農」「風土と健康」について、何かを書くだけの
予備知識は僕にはないが、いずれ考えてみたいと思っている。将来の覚書として
記録しておく。
[PR]

by agsanissi | 2007-10-22 06:56 | 考える&学ぶ


<< やや色付き始める      ソバ刈り取り完了 >>