2007年 11月 02日

「生活習慣病」予防食材?

「肥満の科学」が注目されているらしい。
「トクホ臨床懇話会」のコラム一覧の中に高脂血症・メタボリックシンドロームは「過食
症症候群」
という記事が載っている(参照)。
「脂肪細胞」を高性能バッテリーに喩えて、次のように書いておられる。
(脂肪細胞を通して)高脂血症だけでなくメタボリックシンドローム全体が理解しやすく
なったと思います。「脂肪細胞」は、いわば高性能なバッテリーです。血液中には食物から
得られた栄養が存在しています。脂肪細胞はこの栄養をさまざまな脇役の力を借りて血液中
から細胞に取り込み充電しています。例えば糖は、インスリンの力を借りて細胞内に取り込ま
れます。一方、中性脂肪は、いったん脂肪酸に分解されたうえで取り込まれ、共に中性脂肪
になり保存されます。人間はこの脂肪細胞に貯め込んだエネルギーを放電することによって
生きているといえます。
 ところが脂肪細胞がある程度以上大きくなり、オーバーチャージされると「もう糖よ来るな」、
「脂肪も取り込みたくない」と絶叫して脇役たちに働きかけ、脂肪細胞に糖や脂肪が取り込ま
れることをブロックし始めます。その結果、糖や脂肪が血液中に留まることになります。そして
「血液すらも来て欲しくない」とバルブを閉めにかかると、血圧が高くなります。これらの状態
が、「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」といえます。メタボリックシンドロームは、このように必要
以上に食物を取りすぎて、それに対して体が受けつけなくなった状態を指します。むしろ、
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)イコール「過食症候群」と考えた方が分かりやすい
のではないかと思います


人類の歴史の99.9%は「飢え」の危険に曝されてきたし、現代でさえ人類の四分の三は飢え
の危険に曝されている。身体が「脂肪細胞」という高性能バッテリーを備えて居るのは「飢え」に
対する防禦システムであり、数百万年というスパンの歴史的所産として獲得した食の摂取
パターンに対応した人間の内的システム、或いは食を摂取して代謝を司る生理的機能の一部
だ。一方、摂取する食の量と質は社会システムの変容と共にわずか数十年の、短期間というも
愚かな瞬時の内に激変してしまった。
これが僕の云うところの
・何を「食」とするかは、風土と社会システムで規定され、未開社会ほどより強く風土に
支配され、文明が高度化するほど社会システムに規定されます
・生活習慣病とは風土と歴史的伝統によって培われた人間の身体のシステムと社会シス
テムの変容によって突然現出した食生活習慣とが本質的に相容れなくなった現象だ

の意味合いだ。

京都大学大学院人間・環境学研究科の「肥満の健康科学」(参照)に「脂肪細胞」の概説が
載っている。
冒頭に、先ず「脂肪に対するイメージからか脂肪細胞は不活発な「末梢の奴隷」との見方が
一般的でした。しかし脂肪細胞は生体全体のエネルギー備蓄バランスの要として自らの指令
を中枢に発信し、きわめて活発に生命活動に関与していることがわかりはじめて来ました
」と、
性格規定をしている。単に余剰エネルギーを受動的に蓄える機関ではなく、生体全体のエネ
ルギー・バランスに能動的に関与する器官だということのようだ。
余剰エネルギーは、個々の「脂肪細胞」の肥大及び細胞数の増大によって蓄えられる。
・脂肪細胞の数は,ヒト成人でおよそ300億個、肥満者では400、600億個にも達する
・個々の脂肪細胞は、直径で20倍、容積で400倍ものバリエーションを持っており、この
ような容積変化のある細胞はほかに類をみない
・1個の成熟脂肪細胞には通常0.5~0.9μgの脂肪が含まれている


すると、通常のヒト成人の蓄積エネルギーは、脂肪1グラム当り9Kcalに相当するから、
次のように計算できる。
0.5×1/10^6×300×10^8×9(Kcal)=0.5×3×9×10^4=13.5×10^4Kcal
同じく0.9×3×9×10^4=24.3×10^4Kcal
これは、仮に基礎代謝量を1400Kcalとすれば、約100から170日分に相当する。
成るほど高性能なチャージ能だ、皮肉にも、この「高性能」がいまや現代人にとって健康を
脅かす引き金に転換してしまった。

近畿中国四国農業研究センターの「研究成果」レポートに、「脂肪細胞は悪玉か? ~脂肪
細胞を小さくする農作物~
」(参照)という記事が載っている。そこに「脂肪細胞」には、
様々な大きさがあり、大きさによってその振る舞い、或いは機能が違うという興味深い指摘
がある。
最近、大きな脂肪細胞(特に内臓脂肪)は生活習慣病を引き起こす原因となっていること
が明らかにされました。大きな脂肪細胞は悪い生理活性物質を分泌しインスリンの働きが
効きにくく(インスリン抵抗性)なっている
からです。一方、小さな脂肪細胞はおもしろ
いことに全く逆に生活習慣病を予防する物質をたくさん分泌しインスリンの効きがよく、
体にとってはなくてはならない細胞である
ことがわかってきました。大きさによって善悪
全く反対の性質を持つ脂肪細胞ですが、ともに生活習慣病の発症に重要な役割を果たして
いることから、最近ではアディポサイエンス(Adiposcience、脂肪細胞科学)と呼ばれる
研究領域も生まれて活発な研究が行われています。

またバイオ・テクノロジー・ジャーナルのVol.12「内臓脂肪細胞から見えてくる生活習慣病
予防食品
」(参照)に、
近年わが国において,欧米化した食生活により内臓脂肪過剰蓄積が生じ,生活習慣病が
増大していることが大きな社会問題になっている.対策として,善玉脂肪細胞(アディポネク
チン、レプチン等善玉サイトカインを産生)を作り出し,悪玉脂肪細胞(TNF-α、レジスチン、
PAI-1等悪玉サイトカインを産生)を作らない機能性食品素材の開発が急がれている。

という記事が載っている。
脂肪細胞が、大きさによってその振る舞い、或いは機能が違うという指摘は良い。しかしそこ
から善玉、悪玉という機械的分類をして、脂肪細胞そのものに二分的対立があるかに捉える
考え方はおかしいのじゃないか??
脂肪細胞が、「生体全体のエネルギー・バランスに能動的に関与する」機能を持っているから
こそエネルギーの過剰摂取によって肥大化しすぎた脂肪細胞は、インスリンの機能を「抑制」
することで、炭水化物の代謝調整を果たしている。結果として、それが「糖や脂肪が血液中に
留まることになり」高血圧や高脂血症、血栓の原因になるからと云って、大きすぎる脂肪細胞
を悪玉脂肪細胞と定義するのは、本末転倒の考えではないのか?
エネルギーの過剰摂取が問題なのに、それを忘れて(或いは無視して)「悪玉脂肪細胞を作ら
ない機能性食品素材の開発が急がれている」など、如何にも尤もらしい言い草だが、単なる
お笑いに過ぎない。
前に8/05の記事「遺伝子組み換え大豆/イミテーション食材」(参照)で書いたことを合わせて
読み直し、ここはジックリ考えることをお勧めする。
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by agsanissi | 2007-11-02 20:49 | 考える&学ぶ


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