2007年 12月 03日

尻に火がついた?

明け方から本格的な雪になった。「大雪に関する気象情報」が出され、明日の未明にかけて
雪は降り続き、大雪になる可能性。

「品目横断的経営安定対策」について、07/08/08のコメント欄(参照)で、
農水省幹部は、品目横断は「今後十年は見直しはない」と断言したそうですが、参加対象外
の農家の不満が大きいこと、制度自体の内的矛盾も大きいこと、足元の政権自体が俄かに
不安定になったことなどの理由で、早晩、見直さざるを得ないことになりそうですね。

と書いた。
この「今後十年は見直しはない」という発言は、本省が出先機関の職員を集めて開いた会議
での話を参加者から聞いたもので、参議院選挙前のものだ。
いまは、「今年中」という期限で、大車輪で見直し作業に入っているそうだ。
・安部首相の辞任で、俄かに政局が不安定になったこと
・農村地帯の議員の尻に火がついたこと
・新米の落札価格の値下がりが「新制度」への不満に油を注いだこと

先日の鳩山氏の発言に次いで、12/01付け朝日新聞WEB版に
担い手を育てる狙いで今春始まった国の新農業政策で主産地ほど小麦農家の年間所得が
下がることが分かった。全国収穫量の6割を占める北海道では3割以上減る農家が続出する
見通し。国の助成金が近年の収量増を十分反映しない仕組みに変わったため。(中略)
助成金のもとになる単価の算定は、その年の品質に応じた方法から、過去7年間(北海道の
場合98~04年)の10アール当たりの収量(単収)などに基づく方法
に中心を変えた。国際
ルールに従うためで、市町村別に農水省が決める。(中略)
北海道の単価は05、06年の直近2年の単収に基づく場合に比べ、産地120市町村の8割が
マイナスとなり、20%以上減は55市町に上る。国内産地2位の福岡、3位の佐賀両県もマイ
ナスの市町村が大半で、佐賀では23市町中10%以上減が22市町(うち20%以上減が5市
町)あった。

という記事が出ている。
この記事の見出しは「小麦農家で所得3割減が続出 北海道など深刻 新農政で」という
かなりショックなもの。その割りには、「年間所得」とか「単価」という言葉を、かなり無造作に
使っていて、実際に何が「減収」になるといってるのか、理解できない。
麦の所得に関して、「品目横断的経営安定対策」で、何がどう変わるか、概略的に云うと
18年産までは当該年の「販売収入+麦作安定基金」という構造だったものが、
「販売収入+過去の生産実績に基づく支払い+当該年産の生産実績に基づく支払い」という
構造に変わる。更に、この内の「過去の生産実績に基づく支払い」が麦収入の七割程度を
占めるように制度設計されている。
この内、「過去の生産実績に基づく支払い」の部分が、朝日の指摘する「過去7年間(北海道
の場合98~04年)の10アール当たりの収量(単収)などに基づく方法」に相当するようだ。
「過去7年間」というのが、何を根拠に書いているのか知らないが、実際には平成16-18年
の3ヵ年の平均収量に基づいて算定する。朝日の記事の「所得3割減」が、この三つの構成
要素の全部を合計したものを問題にしているのか、「過去の生産実績に基づく支払い」だけを
問題にしているのか分からない。記事から判断すると後者のような気もするが、これを「年間
所得」というとすれば、明らかな間違い。
朝日記者の頓珍漢な理解では「品種改良や技術革新が進む小麦の主産地では、単収が増
える傾向。06年など直近の高い数字が算定に使われずに過去の低い数値が採用され、助
成金が下がる」ことに問題があると見ているようだが、2年や5年で技術革新が進んで、単収
が急に上がるわけがない。本当の問題は、07/06/29「小麦の作柄」(参照)に書いたように
・過去の生産実績の算定基準を、小麦の検査基準が異常に厳しくなった直後の3ヵ年に固定
する点にある。
・朝日の云うように、仮に過去7年間であれば、相対的に「検査基準が異常に厳しくなった」点
の不利益は緩和される(農水省の説明を見れば分かるように、7年は間違い。参照)。
・平成16-18年に固定せず、移動平均方式にすれば、その後の技術改善が反映されるが、
制度設計はそうなっていない。
という点にある。

鳩山氏の指摘にしても、朝日の記事にしても、何を問題にしているのか、そもそも「品目横断
的経営安定対策」の中身をどれほど理解してるのか危うい。
そもそも「助成金のもとになる単価の算定」方式が変わることで、小麦の年間所得が全体とし
て減収になる可能性があることは「品目横断的経営安定対策」の制度設計の基本に関わる
ことで、最初から分かりきっている。「新聞」記事どころか旧聞に属することは、
僕の06/09/15、06/09/20、06/09/16、06/09/18、07/06/29の記事などを見てもら
えば分かる(カテゴリー分類の「参考記事」や「小麦」から簡単に参照できる)。

大騒ぎするにしても、制度設計の中身を理解もせず、ただ所得の減収だけを担ぎまわって、
一時金の支払いなどでお茶を濁し、制度の基本をそのまま据え置かれたのでは堪らないな
というのが、僕の率直な感想だ。
鳩山氏は、この点を承知してかどうか「法律を変えるのはすぐにはできなくても、緊急対策で
きちんとしのいでいかなければならない」と弥縫策でごまかすことを示唆している。
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by agsanissi | 2007-12-03 12:01 | 参考記事


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