2008年 01月 11日

食料自給を考える/農業の工業化または工業的農業/4

日本の食料自給率の低下には、その主要因だけに限ってみても
・急速な経済発展=工業化及び都市化に伴う農業の自壊作用
・食生活の急速な変容
・市場のグローバル化
などが考えられる。もち論、これは結論というより取り敢えずの仮説と考えてもらいたい。
このうち、後二者はアメリカのファーストフード大手の席捲と切り離しては考えられない。

そこで遅ればせながらエリック・シュローサーの「FAST FOOD NATION」を読んでみた。
2001年に出版され、日本では草思社から「ファーストフードが世界を食いつくす」という
書名で同年夏に出版された。
ファーストフード大手の席捲とともに広がる小規模農場の没落、企業農場による吸収・合併、
農業の工業化などの「事実」をランダムに拾ってみた。

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この30年余りのあいだに、ファーストフードはアメリカ社会の隅々に浸透した。
1970年にアメリカ人がファーストフードに費やした金額は60億ドルだが、2000年には1100
億ドル以上に上った。今日のアメリカ人は、高等教育、パソコン、コンピューター・ソフト
新しい車に投じるよりも多額の金をファーストフードに費やしている。9.p

アイダホのジャガイモ畑においても、コロラドスプリングス東部の牧場においても、ハイ
プレーンズの肥育場や食肉処理場においても、ファーストフードが農業従事者の生活に、
国内環境に、労働者に、国民の健康に及ぼしている影響を、あなたは目の当たりにする
だろう。いまやファーストフードチェーンは、アメリカの農業を牛耳る巨大な食品業界
ピラミッドの頂点に君臨している。1980年代、多国籍大企業は、商品市場を次から次へと
独占するのを黙認されてきた。農家や酪農家は自営できなくなり、必然的に、農業関連
大企業の下請けに回るか、泣く泣く土地を手放す羽目に陥った。いまや家族経営の農場は
不在地主すなわち大企業の経営する農場に取って代わられた。17-18.p

過去25年間で、アイダホのジャガイモ農家の数はほぼ半分に減った。一方で、ジャガイモ
作付け面積は増えている。家族経営の農場が、数千エーカーの規模を持つ企業農場に吸収
されているからだ。こうした巨大な企業農場は、運営上の目的でいくつもの小作地に分割
され、多くの場合、土地を追われた農家が雇われて運営を任されている。161.p

第二次世界大戦以降、アメリカの農家は勧められるままに、次々と新たな技術を取り入れ
て、収穫高を増やし、コストを引き下げ、隣近所を上回る売上げを達成しようと努めてき
た。こうした製造業の経営モデルを農業に取り入れたことで(つまり、コストと収穫高に
焦点を絞込み、ひとつの作物に特化するのを良しとして化学肥料、殺虫剤、防カビ剤、除
草剤を大量に使い、最新の収穫機器や灌漑装置を利用することで)アメリカの農家の生産
性は世界一になった。ところが生産性が高くなればなるほど、土地を追われる農家の数は
増えていった。そして残った農家は、コストを肩代わりする企業と、収穫を買い取る加工
業者のお陰をもって成り立っている。....アメリカの農家経済の構造は砂時計に似て
きた。上の球に約200万の牧場主と農家がいて、下の球に2億7500万人の消費者がいる。
真ん中の細い部分を、十数社ほどの多国籍企業が押さえ、取引という取引から利潤を得て
いる。163.p

マクドナルドは国内最大の牛肉購入者だ。1968年、マクドナルドは175社に上る各地の地元
業者から挽肉を調達していた。数年後、チェーン拡大に伴い、商品の画一性を徹底する
目的で、牛肉納入業者の数を5社に絞り込む。食肉業界は過去20年のあいだに、フライド
ポテト業界とそっくりの経路をたどって、吸収・合併の波の中で再編された。189.p

鶏肉業界も、牛肉業界と同じく、1980年代に起こった合併の波の中で再編成された。今では
加工大手8社が国内市場の約三分の二を支配している。こうした加工業者は、生産拠点を
南部の農業地帯にほぼ全面的にシフトした。気候が穏やかで、労働者の所得水準が低く、
組合が弱く、しかも追い詰められた農家が、どうにかして土地にとどまろうと手段を探って
いたからだ。...鶏肉業界に革命が起こり、大手加工業者が支配力を強めた原因はいくつ
かあるが、なかでもチキンマックナゲットという革新的商品の登場が、特に大きな役割を果
たした。これによって、それまで食卓で切り分けるものだった鶏が、車のハンドルを握りな
がら楽に頬張れるものに変わった。市況商品だった農産物が、付加価値を伴う工業製品に
変わった。これに合わせて生産システムが組まれ、養鶏農家の多くが農奴も同然のありさま
に変わった。193.p
タイソンフーズは、現在、国内向けマックナゲットの約半分を生産し、レストラン・チェーン
大手100社のうち90社に鶏肉を納入している。垂直統合が完了していて、鶏の孵化、解体、
加工までを手掛けている。但し鶏の飼育はしない。飼育に必要な設備投資と財務リスクを
引き受けているのは、数千人の独立請負業者だ。
タイソンと契約した養鶏業者は、鶏舎こそ自前だが、中で飼っている鶏は自分の所有物では
ない。大手加工業者の例に漏れず、タイソンも、契約業者に一日齢の鶏を送り届ける。孵化
したその日から屠られる日まで、鶏は一生を養鶏業者の敷地内で過ごす。それでも所有して
いるのはタイソンだ。タイソンが飼料を供給し、獣医を派遣し、技術上のサポートを提供す
る。給餌日数を決め、設備の変更を求め、家禽指導者を雇って会社の指示がきちんと実行さ
れているかどうかを確認させる。タイソンの派遣したトラックがやってきて積荷の雛を降ろ
し、七週間後に再びやってきて、解体を待つばかりの若鶏を運び去る。加工工場に着くと、
タイソンの従業員が鶏の羽数を数えて体重を量る。養鶏業者の収入は、ここで勘定される羽
数と体重、消費飼料量をもとに、一定の計算式に従って算定される。195.p
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by agsanissi | 2008-01-11 20:15 | 考える&学ぶ


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