2008年 01月 12日

食料自給を考える/農業の工業化または工業的農業/5


続き、
コロラド州グリーリーの臭いは、町の姿が見えもしないうちから鼻を突く。忘れがたい臭い
だが、説明するとなると難しく、いわば生きた動物と、肥やしと、ドッグフードに練りこむ
家畜の死骸とをつき混ぜたような臭いだ。...
グリーリーは近代的な工場の街だ。肉牛がその生産システムの中心にあって、労働者の手と
機械とで、大きな去勢牛をちっぽけな真空パック詰めの牛肉に変身させている。アメリカ人
が今日、一年間に口にする数十億個のファーストフード製ハンバーガーは、このグリーリー
のような町々からやって来る。過去20年間のあいだに、牛の飼育と精肉加工の過程に工業化
の波が押し寄せ、牛肉生産のありようは根底から変わった。あわせて、牛肉を産出する街の
ありようも変わる。ファーストフード・チェーンやスーパーマーケット・チェーンの需要に
応えて、大手食肉業者は、賃金を削ることでコストを抑えてきた。結果的に、かつては国内
の製造業で最高水準の報酬が約束されていた職でぎりぎりの低収入しか得られなくなり、貧
しい移民からなる渡り工業労働力という新たな階層が作られ、高い障害率が放置され、そし
てアメリカ中央部の農業地帯に、スラム街が広がっている。205-206.p

・グリーリーの牛肉の工場生産の一端を伺わせる写真、「米国産牛肉の対応状況」(参照)、特に
12-16ページ
・グリーリーの肉牛生産現場のルポ、「肉食が地球を滅ぼす」の第三章冒頭「肉牛の大量生
産工場」(参照
・食肉工場で働く不法滞在の移民労働者(米国:摘発で移民家族バラバラ

アメリカでは毎日、約20万人が食品由来の病気にかかり、うち900人が入院し、14人が死亡
している。疾病管理予防センターによると、国内人口の四分の一以上が、毎年、食中毒の被害
遭っている。これらの事例の大部分は、当局への報告や正しい診断がなされていない。広範囲
に及ぶ集団食中毒で、正しく認識され、原因が突き止められるのは、実際に起きている件数の
うちほんの一握りに過ぎない。そして食品由来疾患の発生件数が、ここ二、三十年増え続けて
いるだけではなく、これらの病気が、以前考えられていたよりもずっと深刻な害を長期的に及
ぼすということが、確実の立証されてきている。...
食品由来疾患が増えたことには多くの複雑な要因が存在するが、増加の大部分は、近年の食品
製造方法の変化に起因する。...
わが国の産業化・集中化された食品加工システムが、全く新たな集団食中毒を生み出し、何百
万人もの人々を発病の危険にさらしている。270-271.p
本来あるべき環境から切り離された肥育場の牛たちは、あらゆる病気にかかりやすくなってい
る。そのうえ、牛たちが食べさせられる餌が、病気の蔓延に貢献している。穀物価格が上昇し
たため、より安い餌、特に牛の成長を速める高タンパクの飼料が求められようになった。1997
年8月まで、わが国の牛の実に75%が、日常的に、畜産廃棄物(加工済みの羊や牛の残骸)を
食べさせられていた。年間何百万匹という猫や犬の死骸までが、動物保護施設から買い取られ、
飼料にされていた。280-281.p

ファーストフード・チェーンは、西側諸国の経済発展の象徴となった。彼らはたいてい、ある
国が市場を開放したときに最初に乗り込む多国籍企業であり、アメリカ流フランチャイズ方式
の前衛集団として機能する。15年前、マクドナルドがトルコに最初の店を開いたとき、この国
で事業を行う国外のフランチャイズ企業はひとつもなかった。それが今や、セブンイレブン、
ニュートラスリム、リマックス不動産、メールボックスETC、ジーバート・タイディ・カーなど
何百というフランチャイズ店がトルコに展開している。国務省は現在、国外フランチャイズの
ビジネスチャンスについて詳細な研究報告を発行しており、在外公館において、ゴールドキー・
プログラムを実施して、アメリカのフランチャイズ企業が国外で提携先を見つけるための支援を
行っている。319.p
20世紀の大部分のあいだ、アメリカ的価値観と生活様式が世界に浸透していく上で、最大の
障害になっていたのが、ソ連邦だった。ソ連の共産主義が崩壊すると、空前のアメリカ化が
地球規模で起こり、それはアメリカの映画、CD、音楽ビデオ、テレビ番組、ファッションなどの
人気上昇という形で現れた。しかし、これらの商品と違って、ファーストフードはアメリカ文化の
中でも、国外の消費者(consumer)が文字通りに「食する」(consume)類のものだ。アメリカ
人のように食べることで、世界中の人々が、少なくともある側面においては、アメリカ人のような
姿になってきている。アメリカは現在、先進国の中で最も肥満率が高い。成人の半分以上と
子供の四分の一が、肥満或いは過体重だ。この割合はここ数十年、ファーストフードの消費量
とともに、うなぎ登りに上昇してきた。334.p

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僕の関心を引いた主題を中心に、ランダムに引用した。引用は、必ずしもこの本の内容を
要約するものではない。出版から7年以上経っており、使われている資料は10年以上前
のものが多く、現在はどうなっているのか実情は知らない。
ファーストフード・チェーンは、安価で均質な食べ物を地球全域に供給している。それは
食べ物を変えただけではなく、人々の生活様式や文化、考え方までをかえた。
安価で均質な製品を生産するために、その素材となる農産物や鶏肉・牛肉生産の現場に
工業的な管理システムを持ち込み、農業構造そのものを変えた。
今日、アメリカの農業構造がどんなものか、実情はほとんど知らない。
ここに引用した指摘を手がかりに、ぼちぼち調べたいと思っている。
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by agsanissi | 2008-01-12 20:22 | 考える&学ぶ


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