2008年 01月 19日

「農産物の急騰は日本を変える」?

08/1/18のロイター日本語版に、モルガンスタンレー証券/経済研究主席R・フェルドマンの
「農産物の急騰は日本を変える」(参照)と題する分析が載っている。レポートの狙いは、農産物
価格急騰によって、日本農業構造に変化が起き、そこに新たな投資チャンスが発見されるはずだ、というものだ。世界的な投資家の目が日本の農業にどういう眼を向けているか、その一端を
伺う資料として掲載しておく。◆の部分は、僕の評価

・いまの農政は変化を余儀なくされている
ここ数カ月の農産物価格の急騰は日本を大きく変えるだろう。世界の農業分野では、生産性を上げないと食糧安全保障はない、という認識が広がっている。日本が今の農政を継続すれば、地方の困窮化はさらに深刻になる一方である。

・世界的な農産物急騰の原因は何か?
世界人口が70億人になったことが農産物価格急騰の基本的な原因だという意見があるが、
これはデータと整合性がない。1950年前後に世界人口は約20億人で、2000年は約70億人
に増加したが、その50年間に農産物の実質価格は続けて低下傾向にあった。むしろ農産物
供給が需要より早く成長した、という反マルサス派の見方が正しかった。
では、何が原因か?理由は基本的に3つある。1つは、研究開発の成果の広がりがゆっくりであることだ。確かに遺伝子組み換え品種は、米国などで生産性を上げている。しかし、大半の国はこのような技術をフルに利用していない。各国の気候事情に適応することが遅れれば、
供給は「伸びる需要」に追いつかない。
 もう1つの理由は、途上国の所得水準が上昇し、肉の需要が大きく増加していることである。たん白質工場として、家畜は効率が非常に悪い。専門家の計算では、牛肉100グラムを作るには、飼料を少なくとも1000グラム使わないといけない。当然、13億人の中国、11億人のインドの人たちが肉を食べだすと、飼料の需要が何倍も上がる。豚肉は牛肉より、鶏肉は豚肉より効率が良いが、それでもかなり悪い。
 3番目の理由はもちろんエネルギーだ。今の農業はかなりエネルギー集約的になってはいるが、加えてバイオ燃料が今のエネルギー価格の下でようやく採算が合うようになってきた。(補助金はもちろんあるが、これは国防の目的と思ってもいい。)バイオ燃料という技術進歩は、エネルギー価格が農産物価格を引っ張る効果をもたらした。(ただし、バイオ燃料が利用される分、原油価格の上昇が抑えられる。)
◆「食料の未来を描く戦略会議」の第一回会議(07/07/17)の配布資料「今、我が国の食料
事情はどうなっているのか」(参照)の分析と、概ね一致しており、特別に注目すべきほどの分析
ではない。但し、50-60年以上にわたって続いた国際的な農産物の実質価格の低下傾向
は、基本的に転換したのかどうかは注目点である。

・農産物の急騰で進む流通などの構造調整
農産物価格の急騰は、食糧品の投入市場、産出市場、流通経路などの構造調整を促す。これは代替商品、補完商品、投入価格が全てつながっているからこそ起きる。(この部分の詳細は
全部省略する)

・価格急騰で生まれる日本農業改革のチャンス
これだけ動く農産物市場だが、価格変動に鈍感な日本の制度は変わるか、という疑問はもちろんある。しかし、私は、かなり変わるだろうと思っている。
日本の農産物の生産性は、高いレベル(野菜、果物)もあるが、農場の規模からいうと生産性を改善する余地は大きい。農産物が安いときは、低い生産性の機会コストが小さい。しかし、農産物が急騰すると、機会コストも急騰する。補助金をもらうか、生産性を上げるかという計算は変わる。
食糧保障、安全保障の問題もある。インド、ロシア、中国は既に品目によって輸出禁止を実施している。日本の農産物備蓄が足りなくなるかという心配も当然ある。食料品を地政学的な武器として使うことはなくても、充分な食料品を市場から取れるかという心配はある。国内生産を増やすことは時間がかかるので、解決策にならない。
結局、長年の「低生産性農業」を自己利益の道具としてきた役所、政界の戦略は、グローバルな農産物価格の急騰で崩れている。農地法の改正、農業委員会の廃止などの政策が正しい。地方活性化、物価上昇の抑制、安全保障で「一石三鳥」の政策と言える。反対するのは、生産性を抑えて得してきた既得権益の享受者だけだろう。
◆下線部分の評価は、中々面白いし、正鵠を得ているかも知れぬ。
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by agsanissi | 2008-01-19 14:02 | 参考記事


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