2008年 01月 26日

食料自給を考える/食料自給率はなぜ下がった?/15

NB:13回に農業総産出額の「構成比グラフ」が見当たらないと書いたが、やや古い資料
があった。出所が明記されていないが、多分、平成8、9年の農業白書だろう(参照)。
「農業総産出額の品目別構成の推移」として昭和35年から平成7年までの構成比グラフ
が載っている。いま、手元にないので確認できないが農業白書の「付属統計書」が販売され
ているが、長期的な推移を俯瞰するには、白書本体より便利だ。なお「白書」本体は、
農水省の「白書情報」(参照)からアクセスして、読みたければ全文読める。但し、付属統計表
は載ってない(こっちの方が価値があるのにね!)
以下は、全くの余談だけれど、「日本国勢図会」、「白書の白書」など、2-3年前のものは
BookOffで百五円で売られている。これで全体を俯瞰し、必要があれが、最新の資料を
当該官庁のサイト(参照)で確認すれば便利だし、安上がりだ。
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農業の本質的資源は、太陽と水と土地だ。太陽はどうにもならないが、水と土の賦存量は、
決まっているが、社会的・個人的に「利用可能量」は、この順番で制御可能性があり、社会
システムによって有効量は規制される。
「水資源」については、いずれまとめて扱ってみようと思うが、簡単に水資源機構の「地球と水
の科学館」(参照)の
・地球の水の量
・多くの水は輸入されている、を参照。
特に農業用水に関しては、関心のある人は「世界の水資源とわが国の農業用水」(平成15年
2月、農水省農業農村整備部会企画小委員会の報告書、参照

8回に「支配領域の領民を養えない政治的支配は崩壊する」と書いた。略奪、交易、援助、
生産、いずれにせよ一定量の食糧確保は他の如何なる資源を措いても絶対不可欠である。
「戦争の際に決定的な資源は食料ではなく石油である」(参照)と阿呆なことを云う人もいる
けれど、実際にそうかね?
60余年前に、日本は石油をストップされて、対米開戦を決意したけれど、実際にこの戦争で
死んだ兵士の七割は、戦闘で死んだのではなく、餓死したとされている(参照、他に秦郁彦
「現代史の争点」など)。食糧補給の見通しもなしに兵士を戦場に送り出した参謀連と同類の
阿呆だね。
山下氏は、「食料安全保障はエネルギーの安全保障と対比されることが多い。しかし石油や
電気がなくても江戸時代の生活に戻ることは可能であるが、食料がなくては江戸時代の生活
にさえ戻ることができない
」11.p
農業機械を動かす石油の輸入ができなくなれば農業生産が行われなくなるというのは生産
要素間の代替性を考慮しない議論である
(日本の石油類の総消費量のうち、農林水産業と
食品製造業の割合は6%に過ぎない)」24.pと書いている。
同じあり得ない想定をするにしても、どっちがまともな議論か分からん人は、石油を飲んで電灯
線を尻の穴にでも突っ込んで生きていくのかね?!

さて、耕地だ。
これは「日本に農業はいらないか?」でも触れたことがあるが(何回目か忘れた)、明治から
1960年まで、約百年にわたって不変の三数字と云われた農地600万ha、農家戸数600万戸
農業就業人口1400万人というのがある。それがいま、465、285、312になった(参照)。
平成19年の耕地面積の概要、都道府県別面積、拡張・かい廃(宅地転用、耕作放棄など)など
は「農林水産統計」を参照。最近の制度的な問題については「農地制度について」(平成16年
3月の農水省資料、参照)。

大まかなことを云うと、農地は40年余に130万ha減少した。この間に公共事業で新たな農地
造成が100万あるから、実際の農地減少は230万、このうち半分が宅地や工業用地など都市
的用途への転用。都市近郊の優良農地から転用されていくだろうとは、誰にも推測できる。
まだ、厳密な分析はしていないが、農地の減少(減少率の変化及び減少要因)はインフレから
デフレ時代への転換に対応して二段階に分かれるだろうと、僕は想定している。
取敢えず、山下氏の指摘の中から注目すべきものをいくつか。
兼業農家の所得は農外所得の増加により、勤労者世帯を上回っているとともに、農地の宅地
等への転用によるキャピタル・ゲインにより彼らの資産は増加した。毎年のキャピタル・ゲインは
農産物生産額の60%にもなる。農業の所得率は30%なので、キャピタル・ゲインは農業所得
の二倍に相当する。...土地のゾーニング(農用地の区画線引き)がしっかりしてない日本で
は、都市近郊農家は農地転用が容易な市街化区域内へ自らの農地が線引きされるされること
を望んだといわれる
。54-55.p(これは、いまや昔の夢だ)
土地持ち農家のこのような行動はいまや圧倒的多数となった勤労者の反感を買った。
”農家栄えて農業滅ぶ”という状況にもかかわらず、農業に対する反発も高まった
。55.p
農地の減少の半分は植林や耕作放棄等による農業内的かい廃である。ここでも高米価、生産
調整の影響が見られる。消費の減少している米の価格を高くすることによって消費=供給を更
に減少させる一方、他の産品については米との相対的な収益を不利にすることにより、生産
意欲を減退させることになった。(中略)
このような農業内的かい廃のほうが1994年以降都市的かい廃を上回っている。1995-99年
の5年間で都市的かい廃10.5万に対して農業内的かい廃は12.6万haである。これは1994
年以降生産調整規模が拡大しているにもかかわらず、米価が低下していることを反映したもの
と考えられる
。56.p(要するに土地を引受けても収益見通しがないから、引受けてがなく耕作
放棄されているということだ)。

農業所得よりも土地の値上がり益の収入のほうが多く、かつ米の生産性向上に励むよりも生産
調整に協力して何もしないか、大豆や麦を捨て作りにしておいた方が収入があがるような状況
を、何十年にもわたって集落ぐるみ、村ぐるみ、農協ぐるみ、半ば強制されて、それで「意欲ある
農業生産者」など、どう逆立ちしたら育てられるのだ?!
このように歪んだ農業構造や農業の頽廃は、確かに戦後の米偏重・高米価政策に由来する
けれど、僕は、単にそれだけが要因とは考えない。日本人は稲作農耕民だ、日本の農耕文化
の基底は稲作文化だという歴史的な思い込みが深く係っていると考える(土を考える/日本人は
稲作農耕民か/8、「環境」と云う殺し文句、参照)。
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by agsanissi | 2008-01-26 07:24 | 考える&学ぶ


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