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2008年 01月 28日

食料自給を考える/大雑把な数値計算/16

さて、昨日の課題だが、簡単な計算をしてみよう。
明治初年を仮に1870年とする。後は1945、1960、2005年だ。夫々、敗戦の年、戦後最初
の農業基本法の制定、最近。各年の人口総数は3300、7200、9430、12700万人。
耕地面積、農業戸数、農業人口は、前述の通り1870年から1960年まで、600、600、1400
に対して、2005年が465、285、312。夫々を第一期、二期、三期とする。

人口増加率は、年率(複利計算)にして1.046%、1.80%、0.65%
1870、1945、1960、2005年の各年の耕地面積あたりの人口扶養力が1町歩当り5.5、
12、15.7、27.3人。第一期の75年間に約二倍、第二期の15年間に約三割増加しているが、
これを年率で比較すると一期、二期は1.046%、1.50%と増加した。第三期は45年間で
約二倍になったが、年率増加率は1.24%と第二期よりも、むしろ低下している。
農家一戸あたりの耕作面積は1960年までに約百年間は変わらず、その後の45年間で1.63
haまで拡大した。しかし、これを面積当り人口扶養力からみると農業機械化が進み、農業生産
力は向上しているはずなのに、戦後初期の15年より最近45年間のほうが耕地の効率的利用
の面では、却って低下している。

次に人口総数と農業人口数を比較すると、第一期に人口総数は約3900万増加したが農業
人口は変わらなかった。人口総数の6-7割は就業人口と考えてよいから、その大部分は農業
以外の第二次産業に吸収された。農業人口も増えただろうけれど、それは農業からの流出また
は退出を補うだけで絶対数は変わらなかった。これは一方では、僅かながら農業生産力が
向上し、人口増加に見合う程度の人口扶養力を獲得したが、農家そのものの家族扶養力は
向上しなかったとも考えられるし、或いは工業発展力が就業人口の増加数に見合う程度だった
か、人口増加率によって制約されていたかの、どちらかである。
とはいえ、江戸時代の人口の定常状態と比較すると(人口の超長期推移、参照)第二次世界
大戦までの人口増加率、従ってまたそれを支えた農業生産力の向上には目覚しいもの
がある。
次に第二期には、人口総数は2230万人増加した。この間も農業戸数も農業就業人口も変わ
らなかった。ということは工業の急速な発展によって農村人口は工業に吸収されていったけれ
ど、また工業開発がどんどん進められ都市化が進んだけれど、農業にはまだ後継者がいた
し、農村あるいは農村共同体という地域構造は基本的に維持されていたと予想される。
ところが第三期になると、総人口は3300万人増加した。つまり江戸時代の日本がそっくりもう
ひとつ出来たのと同じだけの人口が増加した。一方、耕地面積も農業戸数も大幅に減少した。
特に農業就業人口の1100万人の減少は、一方では農業生産力の向上で面積当りの必要
労働力の著しい減少を示しているが、他方では後継労働力の喪失、従ってまた農業の将来的
な再生産の可能性を著しく不安定にしている。これは取りも直さず農業の産業としての将来性
の喪失の反映である。
更に、耕地、農家戸数、農業人口の揃い踏みの減少は、第三期の工業発展が農村という地域
構造そのものを破壊して進んでいることを示唆している。第二期に比べて第三期に耕地の効率
的利用が後退し、またこの間に食料自給率が急速に低下したことも、農業の再生産構造の
破壊、農村共同体の解体の反映とみなして良いのではないか。

第三期の始まりの農業基本法は経営規模の拡大、農業生産性の向上、需要構造の変化に
対応した選択的拡大を柱とする農業構造の改善を目指した。
40余年の成果として、どうなったか??(以下の数字は、山下前掲書から引用)
農家規模、すなわち農家一戸当りの耕地面積は、日本1.6haに対して、アメリカ197.2、
EUは18.4である。一戸当りの平均耕地面積の拡大率を見ると、1980年から2000年にかけ
てドイツは14.9⇒36.3、フランスは25.4⇒42.0に対して、日本は1.2⇒1.6に過ぎない。
国土面積、ひいては耕地面積の狭さは如何ともしがたい。しかし農家の流出に伴って耕地の
集積が、なぜ進まなかったのか?これを農地価格の面からみると、10a当りの価格が、
アメリカ1.5万円、フランス3.8万、イギリス6.7万、ドイツ14万に対して日本は169.7万円
(いずれも1995年価格)である。資本投下対象としての耕地は、日本では絶対的に採算が
取れない構造になって居る。
農業担い手の絶対数が減少し、最近では耕地の小作料は低下しているが、それでも農産物
価格の低下で借り手そのものが居なくなり、今では転売はもち論、借り手さえなく、耕作放棄地
が拡大している。
このような各国の比較は、明らかに日本の農政の失敗を示唆しているものであって、このような
結果を、個々の農家の行動様式に求める(例えば「補助金に寄生する兼業農家」とか「ホリエ
モンと同じ思考で営農している」農家とか)とすれば、本末転倒も甚だしい。
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by agsanissi | 2008-01-28 13:38 | 考える&学ぶ


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