2008年 01月 29日

食料自給を考える/食料の安全保障/17

前回の大雑把な計算では、四つの変数の比較から推測できる「変化」を指摘しただけで厳密な
議論ではない。一番の欠陥は、食糧充足率を考慮してないことで、例えば面積当りの人口扶養
力は充足率に応じて補正しなければならない。殊に第三期に食料自給率が急速に低下してい
るのだから、実際の人口扶養率は27.3人よりもっと低いし、第二期に比較して第三期の耕地
の利用効率の低下は、もっと著しい。
どういうことか?
国内の農地を、しかも優良農地から、転売し・切売りし、工場や宅地・道路などの都市的用途に
転用し(一方で、農地を切売りして儲ける都市近郊農家の”強欲”を非難する憂説があれば、
他方では農業に対する保護政策が地価高騰の真因だ論ずる珍説が盛んな時期があった)、
他方では多額の国費を投じて基盤整備して開発された地方の農耕地でさえ、最近では耕作者
もなく、耕作放棄され、荒れるにまかされている。
経済効率の悪い農業などに、土地・労働力・資本などを投下するのは、全くの無駄・資源の浪
費だ、高い農産物を消費者に押付ける、開発途上国の発展の道を閉ざすものだなどと論じて、
自国の農業を貶めてきた。こうして、ある意味では極限まで農耕地を荒廃させ、工業と金融で
稼いだ金で自国の農耕地だけでは、到底、充足し得ないまでに胃袋を肥大化させてしまった。
その結果がどんなものか、第13回で指摘した資料「今、我が国の食料事情はどうなっているか」(参照)の12頁を改めて、ジックリ見て頂きたい。
これは脚注にあるように、平成27年度における農地の見込み面積である450万haを前提に、
熱量効率を最大化した場合の試算(2,020kcal/日)だそうだ。
・「国内農地のみで私達の食事をまかなう場合」という想定そのものが、非現実的だと反論する
だろうか?
・それでは、自国の胃袋の充足の四分の三を、他国の農地に依存している現状を、いつまでも
続けられると想定することは、果たして現実的か?(同前の11頁参照)

加えて水だ。山下氏の前掲書から引用すると、
日本はまた食料・農産物の輸入を通じ輸出国の水(仮想水)を大量に消費している。総合地球
環境科学研究所の沖大幹助教授の研究によると、これは年間744億トンにのぼり、琵琶湖の
貯水量の約2.7倍、日本全国の年間使用量の約85%に相当する。農産物1トンを生産するの
に必要な水の量はトウモロコシ千トン、大豆2.4千トン、小麦粉2.9千トン、精米6千トン、鶏肉
4千トン、豚肉6.1千トン、牛肉22-25千トンである。このためわが国の牛肉などの輸入先で
あるアメリカからは427億トン、オーストラリアからは105億トンの水を食糧輸入により間接的
に輸入している
。73.p

土にせよ水にせよ、各国の輸出能力は、歴史的にはもう限界点に達していると見たほうが良い
だろう。一方、自慢の経済力が「世界経済の変化」に置いてきぼりを喰らい、もはや「一流では
ない」と自認するにいたって、将来にわたって自分の胃袋の充足を他国任せにしておいてよい
のだろうか?

最後に、山下氏前掲書から、幾つか面白い指摘を抜き出しておく。
農業改革はWTO・FTA交渉や産業界のためだけでなく、農業自身、さらには国民・消費者の
ためにこそ必要なのである。農業が衰退し食料生産が減少して困るのは農家ではなく消費者
だからである
。4.p
国防は国民に対するサービスの提供である。サービス貿易を自由化するのであれば、日本は
防衛力を持つのを止め、世界最高の優れた軍事力を持つアメリカに対価を払って国防という
サービスをすべて提供してもらうことが最も国民経済全体の厚生水準を向上させるはずである。
しかし、サービス貿易の最も熱心な自由化推進論者であってもそのような発想をする人はいない
。214.p
・「21世紀に向けてアメリカ農業をどうやって確実に繁栄させることができるだろうか。つまり、
これは国家安全保障の問題である。国家が国民を養うのに必要な食料を生産することはたい
せつなことである。自らの国民を養うのに充分な食料を生産できない国を想像できるだろうか
そのような国があるとすれば、国際的な圧力に従属する国、危機に瀕している国である」という
ブッシュ大統領の演説(01/07/27)を引用した上で、
危機に瀕している国とは日本のことを云ったのであろうか。215.p
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by agsanissi | 2008-01-29 08:48 | 考える&学ぶ


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