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2008年 02月 06日

食料自給を考える/食生活の崩壊/20

「食は生を養う」というのは、単に空腹を満たし、身体を養うのみならず、人間の生活文化全体
を養う根源が食生活にあると考えるのが良いのではないか。この点を説得的に展開するには、
どのような論点があるか考えているが、中々、まとまらない。
まずは、今までに僕が書いてきたことの中から関係する論点を挙げておく。

▽07/08/01「土を考える/一物全体食/14」(参照
我々の食事が「一物全体食」から、正反対の方向に向かっていることだ。イミテーション食材は
云うに及ばず、加工食品の氾濫、外食産業への依存、輸入食材の氾濫、これらすべての事情
が「一物全体食」を、益々困難にする方向に向かってひた走っている。挙句の果ては「食べる
こと」を抜いたり、ダイエットのために食べるかに錯覚したり、逆に「食べること」自体が厭わしい
という摂食障害のような倒錯現象まで引き起こすに至っている。

▽07/10/22「食と農を考える/覚書」(参照
「腸内細菌叢(腸内フローラ)と免疫力」に関連して書いた、
食は風土によって支配され、人間の「食」は風土と不可分の関係にあるにもかかわらず、
社会システムが進化するほど、この関係は乖離していく矛盾。すなわち、
何を「食」とするかは、風土と社会システムで規定され、未開社会ほどより強く風土に支配され、
文明が高度化するほど社会システムに規定されます。この場合、社会システムとは狩猟採集・
農耕文明から最近のグローバル化や農業政策・貿易交渉、更にはスーパーマーケットの
支配、商業主義、ダイエット願望、テレビ文化の氾濫、栄養学・保健医学などの科学まで(要す
るに人間の摂食行動を直接・間接に規制する社会的・意識的内容)含む、言い換えれば自然
風土を除く全部と云ってもよいほど広範な(広範すぎる)概念として使っています。

▽07/10/26「生活習慣病/覚書」(参照
人間及び動物は、無機元素から栄養分を取り出すことは出来ない。植物及び他の動物を
摂取して自己の身体を作る(同化)と共にエネルギーを取り出している(異化)。同化・異化を
まとめて代謝という。代謝を司る器官と代謝の機能は、数百万年というタイムスケールの所産
である。その結果、人間の身体は「飢餓」状態に対しては幾重もの防禦システムが作動する
が、この僅か数十年の社会システムの変容によって生み出された「飽食」には対処するシス
テムの備えがない。この意味では、生活習慣病とは風土と歴史的伝統によって培われた人間
の身体のシステムと社会システムの変容によって突然現出した食生活習慣とが本質的に相容
れなくなった現象だ、と僕は理解している。
以上が、現在まで、考えているところだ。

以下は「食生活の乱れは社会生活の乱れ」と説いている東京農業大学の小泉武夫氏の講演
を参考に挙げておく(pdf、参照)。
▽(日本の食料自給率は下がる一方で、このまま下がり続けて20 %台になったら、日本人
は相当餓死すると思います。あと10年くらいでそうなるかもしれませんと書いた後)
餓死にいたらなくても危険な兆候は出ています。若い人たちの間で「クローン病」という病気が
発生しています。10 年前には全くなかった病気で,直腸や大腸に潰瘍ができて、そのうち
潰瘍部分に穴が開いてしまいます。そこからうみや血液が出て急性腹膜炎を起こし、死にいた
ります。現在、2万人くらいの患者がいると言われています。病気になる人が若い人ばかりとい
うことで調査したところ,原因は食べ物によるものだとわかりました。急激な食生活の変化に
よるものです。毎日のようにハンバーグ、フライドチキン、ホットドッグ、インスタントラーメン、
スナック菓子といったファーストフード、コンビニ弁当を食べている若者に多く発症が見られると
のことです。
◆クローン病について(参照

▽また、18 歳から25 歳までの成年男子の精液の中の精子の数が減ってきています。昭和
40 年代には1億1500 万くらいあったのが、平成13 年になると約8000 万前後に激減して
いると言われています。これがあと10 年くらいして5000 万まで減ってしまうと受精能力がなく
なり、日本民族は滅びてしまうのではないかと懸念されています。
◆精子の減少(参照

▽今、日本人は世界一、心の荒れた、情緒不安定な民族になってしまいました。若者に注意
するのも、すぐ「切れる」ので命がけというありさまです。
なぜこうなってしまったのでしょう。初めはストレスによるものだとか、環境の変化が原因だとか言われたのですが、よく調べていくと、大きな要因の一つは食べ物に由来しているだろうとわかってきました。日本人の食生活が急激に変化して、肉を多く食べるようになりました。動物を見
ても肉食性の動物と草食性の動物では、性格が全く違います。攻撃的なのは肉食性の動物です。
◆この手の、単純な二元的対立論には同意できない。

▽日本人を日本民族の遺伝子レベルで考えてみると、今のような肉食には向いていないので
す。日本人としての顔立ちが似ている、赤ちゃんが生まれると青いあざの蒙古斑ができる。これ
は民族の遺伝子によるものです。日本人を解剖学的に見てみると、アングロサクソンやゲルマ
ンに比べて腸が長い。お酒についても、お酒を飲むと肝臓で分解するわけですが、日本人の
場合、アルコール脱水素酵素によって分解しています。ところが、アングロサクソンやゲルマン
は、その酵素のほかにも日本人にはないMEOS系の酵素が加わるのでお酒に強いのです。
民族に遺伝子的特徴がそなわるのは3000 年くらいのスパンです。その土地ではぐくまれた
食べ物によって遺伝子的特徴がそなわり、食文化がつくられます。
それなのに、日本人は、ここ30 年の間に食べ物のとりかたが激変しました。肉の消費量は
3.2 倍、油は3.7 倍です。でんぷん質中心の日本人が、30 年の間に突如として窒素が多く
なり、カロリーや油分が多くなった。日本の若者たちが狂ってくるのは遺伝子が対応できない
からなんだと思います。
◆果たして、食文化の違いを遺伝子レベルの話にまで持っていけるのかどうか、風土・食・
人間の身体の内的関係を、どの程度までつなげて考えられるのか、どういう研究がされて
いるのか、僕には分からない。

▽こういうところを見ると、私は、日本の食生活は堕落したと思うのです。人は、食生活が乱れる
と体調も崩れます。それと同じように、国民の食の周辺が乱れてくると、その国の社会も崩れて
きます。食生活の乱れが社会の乱れにつながっている、それが今の日本の現状です。

▽世界的な潮流としてアメリカが中心となったグローバリゼーションという動きがありますが、
日本にとってはこれは間違いで、ローカリゼーションをまずやるべきです。
「安心、安全でおいしい食べ物」は自分たちでつくって食べなければだめだ、そのためには農業
を後継する若い人たちをつくらなければだめだ、ということを私はいろいろなところで訴えており
ます。
ローカリゼーションの推進という意味では日本食の良さを再認識するべきです。私たちは栄養
学や食文化論という分野を研究していますが、外国人が決まって言います。日本食というの
は、朝はみそ汁と納豆とご飯と漬け物、お昼はサバのみそ煮定食、夜は刺身とご飯とみそ汁と
大根おろしと、そんなものだと。

◆食料自給率の低下や食生活の乱れで、10数年で日本人が大勢、餓死するとか、民族が
滅んでしまうと、本気で懸念しているのかどうか知らないが、高校生相手の講演にしても、話を
漫画的に単純化しているのじゃないか。
但し、食生活の乱れが、生活文化の乱れ、社会的な乱れの大きな要因になりうるという話の
大筋は、同意できる。小泉氏は【食の堕落と日本人】/東洋経済新報社/2001年6月という本
を出しているが、注目すべき点があれば、後日、摘記を作る。
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by agsanissi | 2008-02-06 11:26 | 考える&学ぶ


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