2008年 02月 12日

タンパク質の分解と合成

食品の廃棄とリサイクルの話を書いていて、ふと気付いたのだが、人間(とは限らないが)の
体内では、外部から取り入れたタンパク質の合成と分解のプロセスが絶え間なく繰り返され
ている。
人間の身体は、タンパク質だけで出来ているわけではないが、生命は遺伝情報を媒介にした
タンパク質の様態だと極言しても良いくらい枢要の物質だ。
ウィキペディアを見ると、「タンパク質の生体における機能」として(やや混乱した解説との印象
も受けるが)、生体構造、生体内の情報のやりとり、運動、抗体、栄養の貯蔵・輸送、酵素など
を指摘している。
動植物の身体を構成するタンパク質の種類は、種によって異なっており、人間の身体は概ね
4-5万種類のタンパク質で出来ている。ところが、種によって、また同じ人間でも身体の部位
や体内での働きによって数万種類の異なるタンパク質も、元を質せば20余種のアミノ酸の
複合体(正式には重合という)である。
アミノ酸が鎖のようにつながって一次構造を作り、それが折りたたまれて二次構造を作り、さら
に複合して三次・四次構造まで形成している。タンパク質の種類は、素材となるアミノ酸の並び
方と構造によって決まり、その並び方の順番と構造は全て遺伝子情報に書き込まれ、指先に
爪の代わりに間違って目玉が出来たなんて奇妙なことが起こらないようになっている。
また動植物の種によって、タンパク質の種類は異なっているにもかかわらず、アミノ酸という
共通素材によって作られているからこそ、食物として動植物を摂取することで自分の身体の
代謝が可能になる。人間の身体は、一見、恒常性を保っているように見えるけれど、実は、一時
の休みもなく新陳代謝され交替されている。逆説的な表現になるが絶え間なく変換され、交替
されているからこそ、恒常性を保っているのだ(約二ヶ月で身体の部品の殆どは新品と交換
されるそうだ)。従って、タンパク質の分解と合成のプロセスは動植物の維持にとって絶対不可
欠の過程と云ってよい。仮に、動植物が同一種のタンパク質以外は利用できないとすれば、
共食いするしかなく、従ってそういう構造の種は、最初から発生できない。

人間の体内で、タンパク質の合成と分解のプロセスは、実際にどのような割合で行われている
のか?
「一般のかた向け」と題するサイトの「タンパク質の合成と分解」の項を見ると(参照)、
成人は1日に約60-80gのタンパク質を食事から摂取し、それをアミノ酸に変換します。ところ
が、体の中では1日に160-200gものタンパク質が合成されています。これはどういうことで
しょうか? 実は合成量とほぼ同じ量の自分のタンパク質がアミノ酸に分解されていて、それを
タンパク質合成にリサイクルしているのです。つまりタンパク質の材料のほとんどは食事では
なく、自分自身の分解産物に頼っているわけです。「タンパク質分解は食事より重要である」と
いっても言い過ぎではありません。私達人間社会も一度作ったものをいかに上手くリサイクル
するかが問題になっていますが、生体内ではすでにきちんと行われているわけです(もっと
効率が良く、しかも計画的ですが!)

と書いてある。

体外から取り入れたタンパク質は、いったんは全部、アミノ酸に分解しなければならない。
一方、体内のタンパク質の分解と合成、或いはリサイクルの過程は無差別に行われたのでは
たまったものではない。リサイクルすべきものとそうでないものを識別する標識が必要で、この
ような標識を「ユビキチン」という。
従って、タンパク質の分解系は、二つに分けられる。すなわち(前記「一般のかた向け」解説に
よると)、
イ.選択的タンパク質分解⇒ユビキチン化/プロテアソーム経路
これはどのタンパク質を分解するべきかをきちんと見定めてから分解する方法です。例えば、「ユビキチン」という印のついたタンパク質をせっせと分解する「プロテアソーム」がなんといっても代表です
ロ.非選択的バルク分解⇒リソソーム経路
こちらは、なんでも分解できる万能システムです。しかし、このようなものがその辺にあっては危険で仕方ありません。そこでこのような強力な酵素は細胞内の「リソソーム」と呼ばれる小さな袋(細胞内小器官)にしまわれています。細胞は必要な量だけ、自身の一部をリソソームに運んで分解しています

ところで、面白いというか、奇妙というべきか、体内のリサイクルシステムとも云うべき「ユビキチ
ン化/プロテアソーム経路」のことが解明されたのは、ごく最近のことだ。
「有機って面白いよね!!」(参照)というサイトの「2004年度ノーベル化学賞」に、
スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2004年のノーベル化学賞をイスラエル工科大学のアーロン・チェハノバ教授(57)、同アブラム・ヘルシュコ教授(67)、カリフォルニア大学アーバイン校のアーウィン・ローズ博士(78)に授与すると発表した。細胞内で特殊な酵素の働きにより、不要なたんぱく質が分解される仕組みを解明した。授賞理由は「ユビキチンの仲介でたんぱく質が分解される仕組みの発見」。ユビキチンは鎖状につながって特定のたんぱく質にくっつき、それが不要であることを示す目印となる。この目印によってシュレッダーの働きをする「プロテアソーム」の扉が開き、たんぱく質が切り刻まれる。それまでたんぱく質の生成や働きだけに注目していた科学界に、たんぱく質の『死』という視点を示した研究です
と紹介している。

死と再生のドラマと云っても良いが、「死」というより、リサイクル・システムと称するほうが
より適切だと思うが...。

参考:
○「ユビキチン化/プロテアソーム経路」の詳細を知りたい人は、「有機って面白いよね!!」及び同サイトのリンク先を参照してください。
○「プロテアソーム(たんぱく質分解装置)の分子集合機構を解明
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by agsanissi | 2008-02-12 15:42 | 覚書


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