2008年 02月 27日

閉鎖的ギルド社会

△1.8/0.3度、辛うじて真冬日を超える、日照2.7時間、昼前後雪が一頻り舞う。

日本の農政の基本的性格について、真っ向から対立する二つの意見がある。
・長年の「低生産性農業」を自己利益の道具としてきた役所、政界の戦略は、グローバルな
農産物価格の急騰で崩れている。(08/01/19、参照
・「効率最優先の農政からの脱却を」(08/02/16、参照

確かに、農水省は約半世紀にわたって「生産性向上」を謳ってきた。が、他方では基幹作物と
された米の生産調整を約40年にわたって続けてきた。水田の社会的機能がどうであれ、生産
調整と生産性向上は一般的には両立しない。この点を考えれば、日本の農政が「効率最優先」
に走ってきたなどという批判は、単に悪い冗談でしかない。
産業としては、既に事実上、壊滅状態にあり、高齢者と兼業農家が大半を占め、新規参入者は
殆どない。このまま推移すれば10-20年内には確実に耕作者が消えてしまう。
「自然を相手にし、人命を支える食料生産を担う農業」には「効率や利益を追い求める競争原
理」はなじまないなどと高尚な職業倫理を説いたところで、自分で田畑を耕すだけの気概もな
し。食料安全保障の立場から、どんなに口を酸っぱくして農業の重要性を説こうと、新たな参入
者が生まれなければ、産業として確実に消滅する。

農業就業者、耕地面積、自給率などの数値が、もっと悪くなるのかどうなのか、歴史的には、
ほぼ限界値に近いとは思うが、夜明け前が一番暗いというから、多分、目先は悪くなる他ない
のだろう。

【食料自給を考える】は、「食料自給率」という穴を通して農業・農業政策を考えた場合、どういう
情景が見えてくるか、ということで書き始めた。皆さんが、どういう情景を見たか、充分に正確な
イメージを形作れるだけの素材を用意できたかどうか心許ない面もあるが、現状で僕に書ける
のはこんなものだ。

その結果、僕に見えたのは、非常に大雑把な表現でいうと、日本の農業社会はギルド社会だと
いうことだ。農水省・農協・土地持ち農家・農林族政治家・土建業者などで形成される囲い込み
産業で、一般社会の利益よりも囲い込み内部(すなわちギルドだ)の利益を優先する閉鎖的
産業だ
(「ギルド」については、取敢えずウィキペディアを参照)。
この点、貧農切捨て・零細農家切捨て・選択的切捨て・効率最優先などと見当違いな批判を繰
り返してきた農政学者も、ある意味では、ギルド社会の補完物と見なして良い。

今日、日本の農業が陥っている困難は、このギルド的なあり方が完全に社会的要請と背馳して
しまった点にある。ここから脱皮できるか出来ないか、脱皮できなければ自滅する外ないという
切羽詰った状態にまで陥ってしまったということではないのか。
モルガンスタンレーの研究主席の分析のように、世界的な農産物価格の高騰がギルド的閉鎖
性を打ち壊す切っ掛けになり得るかもしれない。

もち論、「食料自給を考える」の中では、ギルド社会だという批判を展開してこなかった。むしろ、
唐突な結論に見えるかもしれない。しかし、この点をきちんと展開するためには「食と農のドロド
ロ」(08/02/01)の中で触れたように農地制度を初め、戦後の農政全般を分析しなければ、殆
ど何も書けない。将来の課題だ。
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by agsanissi | 2008-02-27 21:25 | 考える&学ぶ


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