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2008年 03月 11日

水をめぐる資源戦争

柴田明夫氏の分析を元に土地及び水が20-30年ほどのスパンで見て食糧生産のネックに
なり得る、とは「食料自給を考える」の第10、11回(08/01/21、22)で見たところ。
折り良く、08/03/10のNBonline(参照)に【日本は実は「水の輸入大国」だ】と題する柴田
明夫氏の【水戦争】の書評が載っている。石油・穀物価格が高騰し、長いデフレのトンネルを
抜けた(「抜けた」のか?)途端、あっという間に史上最高値を更新し、資源戦争の様相を呈し
始めたこの時期、この種の本を出版するには格好の時期だ。尤も、そんな騒ぎの渦中では、
僕は噂だけで満足し、高みの見物を決め込むが...。

「空気と水はただ」というのが長年の日本人の一般的な考え方だった。経済的観点からも金銭
で捉えにくい存在だったと言っていい
。書評は、そんな書き出しで始まっている。

さて、ポイントは何か(以下、「・」印の引用は全て「書評」から)?
・柴田明夫著『水戦争』は、そんな常識が一変しつつあることを明らかにしている。著者いわく
「いまや世界の水資源はエネルギーや金属、食料にも増して資源化している」というのだ。さら
に、そして「将来、原油のように取引所で取引される商品となる可能性も否定できない」とまで
言い切っている。
・欧州連合(EU)が二酸化炭素の排出権取引制度を始めた2005年1月、経済の常識は大きな
転換点を迎えたとみるべきだ。二酸化炭素は言うまでもなく酸素の燃えカスである。その排出権
が取引所に上場され、1トン当たり何ユーロという値段が付き始めたのである。ということは、
実際は酸素の使用に値段が付いたのと同じである。

商品生産は、販売が目的で、消費が目的ではない。やがて販売が一般化されるとともに、事態
は転倒し、販売されるものは商品となり、本来は商品生産の対象ではないし、商品でさえない
ものまでが市場で販売され、販売する権利さえもが商品化される。サブプライム・ローンの焦げ
付きなど、最初からババ抜きのババを売り買いしているようなもので、やがて焦げ付くことは
(ローンの組み手以外は)誰もが承知しながら、危うい橋を渡っている。
そんな世の中だから、空気が売られようが、酸素が売られようが、水が取引所に上場されよう
が、いまさら驚くには当らない。とはいえ、「ここまで来た」ということは、はっきり認識しておく
必要はある(尤も、いざそれが「どこまでか」となると、良く分からない)。

日本の水消費量、
・実は、日本はあまり水資源を使わない国であるという。比較的豊富に水資源があると思われ
がちだが、一人あたりの1年間に利用される水の量は、飲み水、生活用水、工業用、農業用水
を合わせて731立方メートルと、極度の「水不足」の国並みであるという。
・ただし、この計算にはカラクリがある。日本は食料消費量の過半を輸入に頼っている。つまり、
形を変えた膨大な量の水を輸入していることになるのだ。この食料輸入=水輸入があるから
こそ、日本は深刻な水不足に直面しないで済んでいるというのである。

参考:家庭用水、工業用水、農業用水の世界の水消費量について、「偏在する水資源
―世界各国の水消費量―」(参照)というサイトがある。このサイトは、四年前に書かれたもの
だが、「水供給事業の国際的展開が始まっており、サービス事業への国際的な参入ばかりで
なく、貿易商品としての輸送も見られる」と指摘した後、「ただし、水の確保は、権利か、他の
商品と同様に売買されるべきものかの議論
は残っている」と、かなり寝惚けたことを書いて
いる。生きるに不可欠だという意味では食糧も同様であり、事態はそんな懸念を遥かに超えて
進んでいる。

水をめぐるビジネスの現状
・希少化する水を巡って、すでに世界の大企業はビジネス展開を始めているのだ。その実例を
紹介している第3章が、本書の白眉である。
・「ミネラル・ウォーター」を巡っては、スイスに本拠を置く食品最大手のネスレや、フランスの
食品大手ダノン、米国の飲料大手コカ・コーラ、ペプシによる熾烈な競争が始まっている。これ
らの飲料水企業は、先進国市場より、むしろ安全な水道水が確保できない中国やインドなどの
新興国市場において著しい成長を遂げている、という。
・「ウォーター・バロン(水男爵)」と称されるフランスのスエズ、ヴィヴェンディ、ドイツRWE傘下
の英テームズ・ウォーターの3社が、世界各国で民営化された水道事業を買収していること
などにも触れられている。この3社ですでに世界の2億7000万人に飲料を供給しているという
から驚きだ。
・この本の冒頭にも出てくるが、ペットボトルのミネラル・ウォーターは1リットル200円以上
する。ガソリンは上がったとはいえ160円。牛乳も200円以下で買える。そういう意味では、
現段階でも水はガソリンや牛乳よりも高価格で売れる「もうかる商品」、つまり収益性の高い
ビジネスに成長しているのだ。

水は、食料と違って、自給率という概念が問題にされることはない。しかし、水もまた我々の
知らぬ間に、自給できぬ国になるやも知れない。単なる杞憂かしら...。




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by agsanissi | 2008-03-11 05:43 | 参考記事


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