2006年 02月 05日
「輸入牛肉事件」のときに、なんの気なしに「事件には、それを醸成し・育てる、 土壌があるし」と書いたけれど、日常語として「土壌」をこういう意味で使い出し たのはいつ頃からのことか、ふと考えた。 手元に、他に何もないのでネット辞書をあたってみた。大辞泉に 1 地殻の最上部にある、岩石の風化物に動植物の遺体あるいはその分解物が 加わったもの。地表からの深さはせいぜい一、二メートルまで。つち。 2 作物を生育させる土。「―改良」 3 ものを発生・発展させる基盤。「優秀な学者を輩出する―がある」 と出ている。 この場合、日常語では三番目の意味で使うことが多い。 言葉の意味は、時代とともに変わっていく。これを当然と見る人もいるし、嘆く人 もいる。どっちにせよ大勢の人々に使われる限り、変わっていくのは当たり前。 その変化の中に、時代の空気が、あるいは息吹が吹き込まれている。 「..輩出する土壌がある」という代わりに、「輩出するつちがある」といっても しっくりこないな。「土壌」には「つち」だけでは表しきれない何かがある。土壌と いう言葉を、最初に三番目の意味で使った人は、その「何か」をどう捉えていたの か。これを明らかにしてこそ、言葉の辞典の名に値するという考えを貫いているの が、OED という全20巻+アルファの英語辞典だ。 たとえば「土壌」(この場合はsoil だけれど)が三番目の意味で最初に使われた のは何年で、誰が使ったか、明らかに出来る限り、典拠を示して書いている。 つまり本当の意味での「言葉の歴史」辞典の名に値する。 日本でも、同じ考えで言葉の歴史辞典を作ろうという試みは何度かあったけれど、 また「日本国語大辞典」という画期的な辞典もあるけれど、まだ不充分。 でも、あとで図書館で見てみるかななどと思いながら、「土壌」を一般サーチにか けたら350万件もヒットした。 前半の話と全然関係ないけれど、国立科学博物館の「微小藻の世界・土壌の世界」 の展示は、なかなか面白い。
by agsanissi
| 2006-02-05 08:51
| ミミズの寝言
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